とある法務部員の備忘録。

某IT企業に務めるお気楽法務部員が、法律、ゲーム、生活、その他諸々を書き綴っております。

MENU

司法試験に失敗した後のキャリア論(2) -就職活動に向けて-

はじめに

 前回の記事では、司法試験に失敗したからといって、何もネガティブになる必要はないといった趣旨のことを書きました。


 私のロースクール時代の友人に、私と同じく司法試験に不合格となった後、民間企業の就職へと進路変更し、大手外資系金融機関に就職した者がおり、その友人とあーだこーだと激論(?)を交わし、その中で出てきた話をまとめてみました。そんなこんなで、今回は、司法試験に不合格となった後、民間企業へ就職しようと考えている人向けに、心構えですとか、考え方ですとか、色々書いてみたいと思います。

※ そのため、「他の資格試験や公務員を目指す」という方や、「再度司法試験を目指すために予備試験を受験する」といった方にとっては参考にならないと思います。。

 

 なお、今回の記事は、大学又はロースクールを出た後、アルバイトやパートなどの非正規雇用以外での就労経験がない方を対象とさせて頂きます(自分自身がそうだったので)。特に、現行の司法試験制度の下、大学を卒業した後、ロースクールに進学し、3回~5回受験したものの、不合格となってしまった方。年齢で言えば、20代後半から30代前半ぐらいの方を念頭に置いています(それに当てはまらない方であっても、参考になるものを書くよう努めます)。

 

 

就職活動を開始する前に

f:id:pochi-kohchou:20160415123441j:plain

 例えば、大学・ロースクールを卒業し、司法試験を複数回受験したものの、不合格になってしまった方の場合、

 

  • 年齢的には20代後半~30代前半に差し掛かっている。
  • 世間的には「既卒者」「職歴なし」と捉えられる。 

 

 という状況です。これらは往々にしてハンデであり、民間に就職するに当たっての障壁となりやすいものといえます。しかし、年齢が就職するに当たっての足かせとなり、就労経験のない既卒者が忌避される理由を冷静に考えてみてください。

 

 まず、30歳前後というと、世間では、「高校または大学卒業後、10年程度社会人経験を積んだ人」であって、それなりに自身の進むべき道を見つけている年齢です。しかし、司法試験に不合格となってしまったため、民間企業への就職にシフトした人は、これから新たに自身の進むべき道を探すことになりますが、新たに自身の進むべき道を探す年齢にしては遅いという印象を与えます。

 また、企業が「就労経験のない既卒者」を忌避するのは、中途採用の場合、経験の無い人よりも経験のある人を採用したいというのも理由の一つですが、「既卒であるのに、就職しなかったということは、何かしら問題がある人」という認識を根底に持っているからです。

 

 しかし、司法試験受験生は、このようなハンデや企業の言い分に対してちゃんとした反論材料があります。

 

 まず、現行の司法試験の制度上、ロースクールを修了するか、又は予備試験に合格しない限り、司法試験を受験することは出来ません。大学在学中に予備試験に合格できるレベルに到達する人は非常に稀であり、ロースクールにおいて既習コース(2年)又は未習コース(3年)を修了して受験資格を得るか、大学卒業後、予備試験浪人をするのが通常でしょう。そうなると、必然的に、司法試験受験生の年齢は高くなります。つまり、現行の制度上、最終的に司法試験に合格しようとしまいと、社会に出る年齢が高くなるのは当たり前の話です。

 

 また、司法試験に不合格となった場合に、ロースクール修了生や予備試験挑戦者が活躍できる場が社会にはまだ十分にありません。個人的には、そのような受け皿をろくに検討・整備せずに、現行の司法試験制度を導入した国家の責任は重大だと思っていますが、現行の司法試験制度は、高度な法的知識を習得したリーガルパーソンの人口数を増やし、社会に還元することを目的としていたはずであり、「司法試験に不合格になったから、民間企業に就職し、これまで勉強してきたことを活かして働こう」と思うこと自体、制度の趣旨に沿った妥当なものです。「今更、なんで民間なの?」「受からなかったから、民間に切り替えたの?」と聞かれたら、現行制度の趣旨を説明し、その趣旨に沿った進路選択であると、堂々と答えれば良いと思っています。

 

 以上をまとめますと、上述したハンデは、必ずしも司法試験受験生に当てはまるわけではなく、世間一般で言われるところの「既卒」「職歴なし」と同じ状況ではないということを認識しましょう。

 

 

就職活動における注意点

f:id:pochi-kohchou:20160415123852j:plain

 では、就職活動においてどのような点に注意を払うべきでしょうか。

 いかなる業種、職種を目指す場合であっても、全てに共通しそうなことを、以下のとおり、まとめさせて頂きます。

 

(1) 今の状況を納得してもらえる明確な説明を用意しておく。

f:id:pochi-kohchou:20160415124015j:plain

 ロースクール修了生や予備試験受験生は、上述のような「ハンデらしきもの」を背負っていますが、全ての企業がこの点を完全に理解しているわけではありません。

 大企業であれば、現行の司法試験制度を熟知しているケースが多く、司法試験受験生の中には、社会人経験がないものの、十分戦力になる(なりうる)人材が埋もれていることも認識しています。事実、法務人材を募集するにあたり、その人のポテンシャルに注目し、ロースクール修了生を積極的に採用している企業もあります(いわゆる『ポテンシャル採用』)。

 しかし、司法試験受験生に対する認識として、「大学(又は大学院)卒業後、就職しなかったということは、コミュニケーション能力や社会適応能力に問題があるかもしれない人」という印象を持っていることが多いと思います。

 

 もし、企業が司法試験受験生に対してそのような偏見を有していた場合、まずその偏見を取っ払う必要があります。

 個人的には、上述したように、国家は、単に法曹人口を増やすだけでなく、高度な法的知識を習得した多数の人材を養成し、社会に還元していくことをも目標として現行の司法試験制度へと移行させたはずであり、その構想に則って、法律を専攻し、民間企業への就職を企図した…と説明すれば良いと思っていますが、言い方を間違えると、社会構造・制度に対する批判と受け止められかねず、他人への責任転嫁と消極的に評価されるかもしれません。

 そのため、制度を批判するのではなく、「司法試験に合格することを目標としつつも、民間などの他の進路も視野に入れつつ、一般企業でも活かしうる法律の知識の習得に努めてきました」と、前向きに意見を述べ、自分は決して遊んでいたわけではなく(また、社会に出るのが嫌だったわけではなく)、社会で活かすことのできるスキルを磨いてきたとアピールすることが肝要だと思います。

※但し、「それは具体的にどんな知識・スキル?」と聞かれた際に、ちゃんとした回答を用意しておく必要があります。

 

(2) 足りない経験を補って余りある成長意欲を示す。

f:id:pochi-kohchou:20160415124233j:plain

 資格を取得するために浪人していたことに対して、一定の理解を示してもらえたとしても、過去の経歴をマイナス評価しないかわりに、何らプラス評価もしないということがほとんどです。

 要するに、企業からすれば、司法浪人を続けていた理由 及び 民間企業への就職にシフトした理由に真に納得したとしても、「とはいえ、社会人経験がないことに変わりがない」と考えます。

 

 非常に由々しき問題ですが、無いものを「ある」とは言えません。ではどうすべきなのか。この点について私は次のような考え方を持つべきであると思っています。

 まず、経験がないという事実と真正面から向き合い、「自分と同世代の人たちとを比較したとき、経験という面では未熟である」と素直に認めます。何の経験もないのに、自信満々にふんぞり返っていると、「根拠のない自信」と捉えられ、「謙虚さがない」「常識がない」と受け止められかねません。ただでさえ、司法浪人生は「プライドが高い」と思われがちなので尚更です。

 誤解のないように付言しておきますが、面接の際、自信なさげに喋れと言っているわけではありません。自分に自信を持つことは大事なことですし、必要だと思いますが、真の自信とは、その人の内面から自然と滲み出てくるものであって、どれだけ表面を取り繕って話してみたところで、直ぐにバレます。そんなことより、礼節を弁え、自分の足りない部分を素直に認め、謙虚さをもって面接に臨む方が、「ちゃんとした常識を持っている人」「冷静に自己分析が出来る人」と受け止められやすくなると思います。

 

 もちろん、ただ謙虚さを持つだけでは足りません。謙虚さを持った上で、「これから新たなキャリアを構築していくに当たり、高い成長意欲を持っている」という点をアピールすることが重要です。

 企業が、経験者を中途採用する際、「以前勤めていた会社のルールや常識に染まっていないか」という点を気にすることが多いのですが、社会人経験がない既卒者の場合、初めて就職する会社ですから、そのような点を心配する必要がありません。これをアドバンテージとしないのは非常に勿体ないです。

 ですので、いかなる企業のカラーにも染まっていない真っ白な状態であることをアピールしたうえで、強い成長意欲を見せましょう。

 

 そして、ただ単に成長意欲を見せるだけではダメです。口ではいくらでも言えるからです。「一生懸命頑張ります」「御社にとって不可欠の人材となります」なんて誰でも言えますし、その言葉だけでは説得力はないですよね。

 そこで、具体的に、「今、〇〇〇という本を読んで、この業界のことを勉強しています」「御社で働くうえで、■■■というスキルがあれば有用だと考えましたので、今、△△△という勉強をしています」等、現在進行形でスキルアップを図っていることを説明しましょう。そのように、今取り組んでいることを具体的に説明することにより、成長意欲を有していることに説得力を持たせることができます。

 これは、有用な資格を有していないため就職活動に困っている人にも共通して言えることです。実際、私は、司法試験に不合格となった後の最初の就職活動の際、何ら資格を有しておらず、目立ったスキルもなかったのですが、「今、ビジネス英語の勉強をしています」「TOIECスコア〇〇〇点を目標にしています」といった具合に、成長意欲を示すことにより、内定を勝ち取りました。

 あとで、人事担当者に聞くと、「経験面では不安が残ったけど、必死さが伝わってきた」「早期にキャッチアップ出来そうな印象を受けた」と、それなりに評価して頂けたみたいでした。

 

(3) ビジネスパーソンとしての素養を見せる。

f:id:pochi-kohchou:20160415124423j:plain

 司法浪人生は、司法試験合格に向け、法律の勉強に専心してきた人種ですから、知識に偏りのあることが多く、そのため、「ビジネスに疎い」「時間をかけて育てなければならない」と思われがちです。司法浪人生全員に当てはまる話ではないと思いますが、そういう点も注意した方が良いと思います。

 

 そのような印象を与えようにするためにも、日頃から政治・経済ニュースに出来る限り目を通し、世の中の動きにアンテナを張っておきましょう。オススメは「News Picks」という経済ニュースアプリです(以前別の記事でもオススメしたアプリです)。その道の第一線で活躍されている専門家の意見を読むことができ、非常に参考になります。これらの記事に日頃から意識的に目を通しておけば、面接の際に時事ネタを振られても、あたふたしなくなると思います。

 また、一流と呼ばれる経営者の書籍も読んでみましょう。本田宗一郎さんやスティーブ・ジョブズ井深大さん、三木谷浩史さん、孫正義さん、南場智子さん…などなど(IT業界に勤めているので、例示としてIT系企業の社長さんが多いのはご勘弁を)。「リーダーとはかくあるべき」「組織とはかくあるべき」という、リーダー論・組織論が多いですが、一流の経営者がどういったことを考えながら組織を構築させ、ビジネスを成功へと導いたのか、目からウロコのお話も多いです。

※どうしても就職したい業種があるのであれば、その業種に精通しているプロフェッショナルの著作にも目を通すべきです。

 

 

おわりに

 今回は、司法試験に不合格となった方を対象とした就職活動の注意点を書きましたが如何だったでしょうか。次回は、「法務を目指している方」を対象にあれこれ書いてみたいと思いますので、乞うご期待を!

 

こちらの記事もあわせてどうぞ↓