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とある法務部員の備忘録。

某IT企業に務めるお気楽法務部員が、法律、ゲーム、生活、その他諸々を書き綴っております。

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企業法務キャリア論 第1回「法務の採用傾向と法務部門の現状」

法務

はじめに

 どうも、こんにちは~♬(*'ω'*)

 前々回、前回と、司法試験に不合格となった後のキャリア構築に対する考え方や心構え、就職活動に臨むにあたっての注意点など 、司法試験に失敗した後のキャリア総論を書いてきました。


 今回から各論としまして、「企業法務キャリア論」という主題のもと、連載企画でいろいろ書いてみたいと思います。企業法務という仕事に興味がある方、ロースクール修了後企業法務の道に進みたいと考えている方にとって何かしらご参考になれば幸いです。

 

 

企業法務の採用方針の傾向

 一概に言えないんですが、企業が法務人材を欲した時、大体以下のどちらかの採用又は教育方針を採ることが多いと勝手に思っています。

 

 一つは、自社の事業内容に精通している既存社員を法務部門に転属させ、法務パーソンとして育成するという方針です。営業職などを経験し、足腰を鍛えた人の方がビジネスマンとしての知見と広い視野を持っており、自社の業務フローや課題・問題点にも詳しいため、新たに外部から人材を採用するよりも、育成の手間が省けるというメリットがある一方で、ビジネス法務の世界で通用する法律知識の習得等に時間と労力を掛けなければならないという側面もあります。

 なお、新卒採用で法務部門に絶対配属されないというわけではありません。実際、私の友人にも新卒入社で法務部に配属となった者がおります。ただ、その場合でもジョブローテーションなどの制度の下、他部署の業務に従事させられることが多いと思います。

 

 もう一つは、経験豊富な外部の法務人材を採用するという方針です。転職サイトなどで法務求人を検索すると、「弁護士有資格者」「法務経験〇年以上」「英語・中国語を習得している人」など、かなりハイスペックな人材を求めていることが分かるかと思います。

 こちらの方針の場合、法務としての知識・経験等は十分なため、育成に余計な手間がかからない一方で、自社の事業内容や業務フロー、組織体制、社内ルール等を一から理解してもらう必要があります。また得てして人件費は高騰します。

 

 要するにどちらの方針にしても一長一短であり、採用・育成コストなどと相談しながら方針を決定することになります。企業のカラーが出やすい部分でもあり、「営業職などを経験した人でなければ法務は務まらない」という考え方の企業もあれば、「法務として即戦力となるスペシャリストが欲しい」という考え方の企業もあるでしょう。

 

 

法務部門の現状

 ここから先は推測も含まれています。

 

 法務は採用枠が限られており、かなり狭き門です。また、求められるスペックがめちゃくちゃ高いため、「法務に就職するのは難しいんだろうな…」と思われる方も多いのではないでしょうか。

 しかし、一口に法務と言っても、そのレベルに疑問符がつく場面に度々遭遇します。例えば、とある法務部門が存在する取引先との契約交渉の場面でこんなことがありました。

 こちらが継続的役務を提供する債務を負い、取引先が金銭支払債務を負うという内容の準委任契約において、財務不安などに陥れば、双方解除権を行使できる旨を規定し、そのような解除事由に該当した場合には、取引先が負っている金銭支払債務の期限の利益は喪失し、直ちに弁済しなければならないという、いわゆる「期限の利益喪失特約」を規定しました。

 これに対し、取引先は、「なぜ自分たちだけが期限の利益を喪失することになるのか」と思ったのか、解除事由に該当した場合には、こちらも期限の利益を喪失するという内容への変更を要求してきました。「お互い期限の利益を喪失するのだから、これで公平だ」と認識されていたのかもしれません。

 

 しかし、法律を勉強してきた方ならお分かりかと思いますが、継続的役務の提供という履行期の定めのない債務の場合、そもそも最初から期限の利益がありません。ですので、期限の利益を喪失すると規定しても全くの無意味です。

 本気で司法試験を目指してきた人からすれば、「え、そんな初歩的なことも理解していないの?」と驚くかもしれませんが、そういうことは結構あります。おそらく、他の職種を経験した後に法務部門に転属となり、実務をやりながら法律を勉強されたのではないかと推測しますが、法律の基礎が身に付いていないと言いますか、表面的な知識しかないと言いますか。それなら、司法試験を目指して勉強してきた人の方がよっぽど法的知識や法的思考力に長けているなと感じます。

 

 そして、リスクが顕在化しない限り、事の重大さに気付かないうえに、そのようなマズい対応をしても、それを指摘できる人が周囲にいないため、「なーんだ。法務って簡単じゃないか」と勘違いしている企業組織も少なからずあるんじゃないかと思います。そういう企業は、既存の自社人員でリソースは足りていると認識しているので、新たに法務人材を外部から採用することもほぼありませんし、法務を軽視している傾向にあります。

 他方、大企業では、そのような契約審査はまずあり得ないので、ちゃんとした法務人材が絶対に必要であると認識しており、組織全体としてレベルの高い法務セクションを醸成しようとするのが普通です。

 

 …んで、結局何が言いたいのかといいますと、以上を踏まえ、大企業とそうではない企業との間で、法務に関しては物凄い二極化が進んでいる…というのが私の見解です。大企業でもない限り、コンプライアンスに力を入れる必要性を感じませんし、内部統制やリスクマネジメント等を専門に扱う部署を設置する必要もありません。

 これが現在の日本企業における法務部門の現状かなーという感じです。但し、ベンチャーといえども、上場を視野に入れて、上場準備などを進めている企業であれば、ちゃんとした法務部門や法務担当者を設置しています。

 

 とりあえず、第1回目はここまで。次回より、法務部門への就職や求められる法務人材像というテーマで記事を書いてみたいと思います。

 

企業法務キャリア論第2回はこちら↓