箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

私が「ブラックバイトと戦わなくていい」と思う3つの理由。

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 筆者は、学生時代いろんなバイトを経験しましたが、その中には、「良い職場に恵まれた」と感じるバイト先もあれば、「そっこーで辞めてやる!!」と思ったバイト先もあります。

 後者については、「これパワハラだろ」と思うような罵詈雑言を浴びせられたこともありますし、仕事でちょっとミスしただけで給料から天引きされたり、休みなく14連勤をさせられたり、結構めちゃくちゃなこともありましたね(笑)。

  私の学生時代は、「ブラックバイト」とは呼んでなかったように思いますが、当時はまだ何の知識もない子どもでしたし、大人と対等に渡り合うこともできず、そういう意味では、本質的な部分は変わっていないと思います。

 

 んで、今回の記事の結論を先に言いますと、「ブラックバイトと戦わなくていいから、さっさと辞めよう」ってことを言いたいです。

 

 

ブラックバイトと戦わなくていい。

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 昨今、ブラックバイト問題に言及している記事として、「なかなかバイトを辞められないこと」を前提として、正しい法的知識を身に付け、ブラックバイトと戦う術を解説しているものをよく見かけます。

 「正しい法的知識を身に付けるべき」という点は賛成ですが、「〇〇〇という事態に遭遇したら、△△△という対策をとりましょう」と、ブラックバイトと戦うことを後押しする論調には基本的に反対と言いますか、腑に落ちません。「正しい法的知識を身に付けて、速やかにブラックバイトを辞めましょう」であれば、賛成ということですね。

 何故、私がそのように思うか、以下詳細に書いてみたいと思います。

 

① 労力をかけて戦っても代償の方が大きい。

 まず、ブラックバイト・ブラック企業は、そもそも遵法意識が欠落しており、法令や労働者の権利を守る気なんて、さらさらありません。そのような遵法意識ゼロのブラックバイトと戦うことは、とてつもない気力と体力を要します。個人的に、学生にはブラックバイトに向き合うのではなく、学業と向き合って欲しいという思いが根底にあります。

 中には、ブラックバイトに対抗するために、労基署や弁護士に相談したり、違法行為の証拠を収集したり、マスコミや行政に告発したり、「自分のような被害者をこれ以上増やしたくない」との正義感の下、これらの行動に移す方もいます。その行動はもちろん立派な行動ですし、後々の人生を考えたときに、その人の財産になるかもしれません。

 

 ですが、周囲の大人が、「ブラックバイトを懲らしめる方法があるよ」と入れ知恵をして、積極的・能動的にその方向に持っていこうとするのは違和感を覚えます。法令を守る気のないブラックバイトと戦うのは、前述のとおり、相当な気力と体力を消費し、時間もかかります。大人がやっても大変なことを、まだ20歳前後の、しかも学生がやるとなると、かなりの確率で学業に支障が及びます。場合によっては、大事な身体・精神にも影響が出てしまうかもしれません。そんな事態に陥ったら、それこそ本末転倒です。

 しかも、労力に見合うだけの見返りがあるかと言われると、非常に疑問です。例えば、未払い残業代の請求、有給休暇の取得、セクハラ・パワハラに対する慰謝料請求等、いずれも労働者の権利として当然認められるべきものであり、「泣き寝入りしたくない・させたくない」という気持ちもよく分かりますが、上記デメリットの大きさを考えると、速やかに辞める方が得策だと考えています。

 

② ブラックバイトを撲滅させるのは社会の責任である。

 周囲の大人が、学生に対して、「ブラックバイトと戦う術」を伝授し、ブラックバイトの実情を世間に知らしめ、ブラックバイトを撲滅させようとの考え方を持つ人もいるかしれません。学生が求めれば、自分たちはいつでも手を貸すよ、と。ですが、これも個人的には違和感しかありません。

 これまで、ブラック企業について、さまざまな内部告発や訴訟が提起され、時には法的・社会的制裁が加えられて、倒産にまで至った会社もありますが、相変わらずブラック企業はなくなりません。ブラックバイトも理屈は同じであり、ブラックバイトに苦しむ学生たちが、同じような行動に移し、ブラックバイトの実情が世間に明るみになったとしても、ブラックバイトはなくならないと思います。これらは氷山の一角であり、その他多数のブラック企業・ブラックバイトからすれば、自分たちの同類が摘発されたとしても、「自分たちとは無関係」「摘発されっこない」「たとえ問題を指摘されても、大した問題じゃないでしょ」と思っていることがほとんどだからです。

 

 もちろん、そのような行動に全く意味がないとまでは思いません。学生たちの勇気ある行動によって、社会全体のブラックバイトに対する問題意識を喚起させ、ブラックバイト撲滅に向けた世論の高揚に繋がると思われるからです。そういう点では、確かに学生がブラックバイトと戦うことに意味はあるといえます。

 しかし、悪い言い方をすると、「大人が、学生を使ってブラックバイトに代理戦争をしかけ、ブラックバイトを撲滅させよう」としているように映るんです。上述のとおり、ブラックバイトと真正面から戦うことには相当のリスクがあるにもかかわらず、です。

 そもそも、ブラックバイトと真正面から戦い、ブラックバイト問題を解決するのは社会の責務のはずです。ブラック企業について、社名公表やハローワークでの求人広告受理拒否などの対策が進められていますが、ブラックバイトについても、必要且つ有用となる法令を整備し、行政機関が知恵を練って対策を進めていくことが、ブラックバイトを撲滅させる本来のあり方ではないでしょうか。

 

③ 皆辞めればブラックバイトはなくなる。

 そもそも、学生にとって最もダメージが少なく、それでいてブラックバイトを撲滅させる最善の手段は、「辞めること」だと筆者は考えています。ブラックバイトなんて、皆辞めて寄り付かなくなれば、経営は成り立たず、市場競争原理によって自然と淘汰されていくものです。

 置かれている状況はそれぞれ異なり、「なかなかバイトを辞められない」という事情を抱えていることも重々承知していますが、法令を守る気のない職場にとどまる必要なんて全くありませんし、職業選択の自由は憲法によって保障された基本的人権のひとつであり、「辞めること」は労働者の権利です。その権利を行使して、誰かに文句を言われる筋合いなんて全くありません。後ろめたく感じる必要もありません。堂々と辞めましょう。

 それがブラックバイトの撲滅に繋がりますし、学業の負担となっている元凶を断ち切ることにもなります。自分も学生時代、いろんなバイトを辞めてきましたが、別に労働者に付与された権利を行使しているだけであり、何の負い目も感じていませんでした。「たかがバイトの辛さに耐えられない奴が、社会人になって通用するわけがない」「逃げ癖がつくぞ」と言われたこともありましたが、

 

( ゚Д゚)ハァ?

 

 って感じでした(笑)。「たかがバイトで、なんで学業の邪魔をされなければならないのか」って思ってましたし、社会人になって働くようになり、「あの時、学業の負担となっていたブラックバイトを早く辞めておいて良かった」「ちゃんと学業に集中しといて良かった」と心の底から思います。もちろん、バイトをすぐに辞めたからといって自分の精神力を卑下したこともないですし、現在、社会人として通用していないとも全く思いません。はい。

 バイトもれっきとした仕事ですから、社会人としての自覚を求められる場面ではありますが、学生の本業は勉強です。周囲の雑音とかどうでもいいんです。「学業の負担になっている」「この職場は法令を守る気がない」と思ったら、辞めましょう。

 

戦わなければならない場面もあるっちゃある…けど。

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 とは言いつつも、バイトをやっていて、例えば、「酷いパワハラを受けて、うつ病になってしまった」「シフトを強要され、大学の定期試験を受けられなかったために、単位を落とした(卒業できなかった)」など、重大な損害・損失を被った場合は、バイト先を訴えるなどして、自身が被った損害の回復をはかるべきかと思います。

 筆者としては、そうなる前に辞めるべきだったと思いますが、そこまでいったらさすがに私も訴えます。これは例外ですね。

 

 んで、少し私の友人の体験談を紹介して、今回の記事を締めくくりたいと思います。

 私の友人(仮にAとしておきます)は、かつて、とある中小企業に勤めており、その会社が、THE・ブラック企業でした。いわゆる社長のワンマン経営の会社でして、残業代・ボーナスは出ないし(求人票には支給されると明記)、拘束時間も長いし、毎日社長の怒号・恫喝が飛び、毎月のように誰かが退職していたそうです。また、どれだけ仕事で成果を出しても一切評価されず、給料は据え置き。入社5年目の役職付きの社員が、入社1年目の新卒入社社員と基本給が同じ…なんていう、信じられない話も聞きました。役職手当も雀の涙です。

 そんな中、友人Aは、会社が不正行為をやっていることを見つけてしまったそうです(不正行為の内容は書けないですが…)。これまでの待遇の悪さについては我慢していたものの、陰に隠れて不正行為を働いていることについてはついに我慢できなくなり、マスコミや行政庁などに内部告発をしました。

 すると、それからというもの会社(というか社長)から嫌がらせの雨あられ。仕事を与えられず、自主退職に追い込まれ、しかも、 重箱の隅をつつくようないちゃもんをつけられて、訴訟まで起こされました。さすがに友人Aも精神的に参ってしまって、1年ほど仕事にもつけず、その後の再就職活動も非常に苦労したと話していました。

 

 この友人の体験談は、あくまでも一例ですが、法令を守る気のないブラック企業と本気で戦おうと思ったら、相当のリスクがあるということを覚悟しておいた方がいいです。大人でも心が折れます。

 そして、学生がそのリスクを負う必要はないというのが私の持論です。学生時代という限られた期間だけ勤めるバイトのために、身も心もズタボロになる必要なんてありません。というか、そうなって欲しくないです。

 

 だから、もし自分の周りにブラックバイトで苦しむ学生がいたら、「いかにして戦うか」ということをアドバイスするのではなく、「いかにして辞めるか」ということをアドバイスします。どうか、ブラックバイトのせいで学業がおろそかにならないことを願いつつ。本日はここまで。