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【英文契約 Part3】補償条項(Indemnity)の機能と修正の方向性

「補償」と「損害賠償」との違い

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 英文契約の中には、「Indemnity Clause(or hold harmless clause)」という特殊な条項があります。例えば、以下のようなものです。

「Each party shall indemnity, defend and hold harmless the other party, their affiliate, respective directors, officers, employees, agents, contractors, and representatives from and against all claims, damages, losses,  liabilities, costs, expenses, including reasonable attoney's fee, arising out or in connection with this Agreement.」

(各当事者は、本契約に起因し又は関連する一切の請求、損害、損失、責任、合理的な弁護士報酬を含む費用について、相手方当事者、相手方の関連当事者、取締役、役員、従業員、代理人、契約者、及び代表者を防御し免責する。)

 

 「Indemnity」「Indemnify」「Indemnification」は、直訳すると「補償」ですが、英文契約に慣れていない人がこの条項を目にすると、「ああ、日本法で言うところの損害賠償のことだな」と勘違いしてしまうことも多いんじゃないかなと思います。

 しかし、文言をよく読んでみると、契約当事者以外の第三者が損害を被った場合であっても、当該第三者を防御し(defend)、免責する(hold harmless)などと書かれており、「あれ…?おかしいですよ?あれれ?」と、加藤一二三先生も戸惑う内容となっています。

 

 ますですね。最初の出発点としまして、英文契約の「補償」と日本法の「損害賠償」は異なる法的概念であるということを理解しておく必要があります。

 

 日本法の「損害賠償」は、要するに「自分のミスで相手に損害を与えたのであれば、その損害を賠償しなければならない」という過失責任です。

 他方、英文契約における「補償」とは、特に制限のない限り、無過失責任です。自分のミスなのかどうかという点に関わりなく、契約に起因して生じた全ての損害について、これを補償する責任を負うことになります。

 

 また、日本法の「損害賠償」の概念によりますと、契約当事者以外の第三者が被った損害を賠償する責任は、債務不履行責任ではなく、不法行為責任です。契約の効力は相対的なものであり、当該第三者には及ばないからです。

 他方、英文契約における「補償」は、契約当事者間の損害の公平な分担というより、第三者が被った損害に対して、これに対応・補償することを主な目的としています。契約上の機能からして両者は違うわけですね。

 

 

 このように、両者は異なる法的概念であって、非常に大きな法的リスクを秘めており、且つ、ほぼ全ての英文契約に登場するにもかかわらず、専門書では、Indemnityについてあまり詳細に書かれていません。というか、触れられていないことも多いです。

 

Indemnity条項の修正

 以上のとおり、非常に法的リスクが大きい条項であるため、ほぼ確実に修正を入れることになります。たぶん、Indemnity条項が規定されている英文契約の95%ぐらいは何らかの修正を加えたと思います。

 

 修正の方向性としましては、おおよそ、①補償対象者、②補償の対象となる行為・損害、③責任発生根拠に制限を加えることによって、日本法の「損害賠償」に近づけることを意識しています。

 例えば、補償対象者から「代理人」や「契約者」といった契約者当事者以外の第三者を削除したり、過失責任に限定したり(※)といった修正ですね。

 

(※)例えば、「Each party shall indemnity, defend and hold harmless the other party, their affiliate, respective directors, officers, employees, agents, and representatives from and against all claims, damages, losses,  liabilities, costs, expenses, including reasonable attoney's fee, arising out or in connection with any negligent act or ommision of this Agreement, or violations of applicable laws and regulations by Indemnifying party.」など。