読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

とある法務部員の備忘録。

某IT企業に務めるお気楽法務部員が、法律、ゲーム、生活、その他諸々を書き綴っております。

MENU

【契約書】SES契約の問題点や成果物に対する責任について

SES契約とは

f:id:pochi-kohchou:20160902132750j:plain

 SES契約とは、「システムエンジニアリングサービス契約」のことであり、簡単に言いますと、システムエンジニア(SE)のリソースをお借りして、その役務提供に対する対価を支払うという契約のことです。SEの経験や能力、工数などを考慮して単価が設定されます。

 

 SES契約とシステム開発委託契約は以下の点で異なっています。

 まず、一般的なシステム開発委託契約は、民法上の請負に該当しますが、請負契約では、「仕事の完成」が債務の内容となっており、当事者間で合意された仕事完成物の引渡しが必要となるのに対して、純粋なSES契約は、準委任契約ですので、仕事の完成は債務の内容とはならず、善良なる管理者の注意をもって、委任事務の処理(システム開発業務)に当たればそれで足りるということになります(民法第632条、第643条、第644条、第656条)。

 請負契約の場合、請負人は仕事の完成に責任を持たなくてはならず、目的物の引渡後においても瑕疵担保責任が課されるなど(民法第634条以下)、非常にシビアな契約類型です。そのため、請負契約たるシステム開発委託契約は、人員や工数が徒に増えて高額になるケースが多く、なるべく開発費を抑えたい発注元にとっては取りづらい選択肢となります。

 これに対して、SES契約の場合、役務提供に対する対価(人件費など)だけで済むため、開発委託契約に比べて安価であり、コスト削減に繋がりますし、自社で充足させることができない開発人員を補うことができて、一石二鳥といえます。また、受託側(ベンダー側)にとっても、仕事完成義務や瑕疵担保責任を負わないため、お互いにとってメリットが大きいわけです。

 

SES契約の問題点

 ただ、決してメリットばかりではありません。ここでは、SES契約の問題点と、個人的に最近感じた理不尽さを書き殴りたいと思います(笑)。すみません、ちょっと怒りも入っているのでご了承ください…m(__)m

 

偽装派遣偽装請負の問題

 SES契約は、あくまでも準委任契約ですので、SEは、ベンダー側の指揮命令の下で業務に従事する必要があり、発注元の指揮命令系統から独立していなければなりません。

 もし、ベンダー側が、労働者派遣事業者として許認可を得ていないにもかかわらず、SEを発注元に派遣して、発注元の指揮命令に服させていた場合、労働者派遣法、職業安定法に反し、違法です。これがいわゆる偽装派遣偽装請負の問題であり、過去に裁判でも争われているので有名ですね。

 しかし、実態としては、かなりこの線引きは曖昧になっているのではないかと思います。開発現場では、多少なりとも、発注元担当者が指示を出すこともありますし、いずれの指揮命令監督下で業務に従事しているのかよく分からないというSEさんもいらっしゃると思います。

 そのため、コンプライアンス上、SES契約はやらないという方針の企業もあるようです。もし、SES契約をご検討されているのであれば、事前に指揮命令系統を明確化し、業務管理の主従を間違えないように、現場との意思疎通を図ることが必須になるかと思います。

 

② 成果物に対する責任について

 偽装派遣偽装請負の問題も重大ですが、SES契約において、ベンダー側(場合によっては社内の人間)といつも揉めるのが成果物に対する責任についてです。

 上述のとおり、SES契約は準委任契約ですので、仕事完成義務も瑕疵担保責任も負いません。しかし、業界的にはこの部分だけが一人歩きして、「ベンダー側は成果物に対する責任を負わなくていい」という、決して正確ではない認識が蔓延しているように思います。社内の開発責任者も、「SES契約なので、成果物の責任はこちら持ちですよね」と言ってきたりします。いや、ちょっと待て。この点について少し整理しようぜ。

 

 まずですね。仮に、契約内容からして、純粋な準委任契約だったとします。たとえ、そうだったとしても、受任者は善管注意義務を負うため、かかる義務に反して、委任事務の処理を誤り、成果物に何らかの瑕疵を生じさせれば、当該瑕疵について、受任者の善管注意義務違反を追及することは十分に可能であると思われます。この点を理解していないベンダーがあまりにも多過ぎです。

 たまに、「これはSES契約なので、成果物の瑕疵等について保証できないし、一切責任を負えない」と回答されるベンダーがおり、「もし、成果物の品質について責任を負えというのであれば、追加費用が必要となる」などと説明したりします。しかし、個人的には違和感しかありません。

 何でもいいからシステムを作れば良いというのであれば、そこらへんのSEを連れてきて、所定の作業時間に当たらせ、全く使い物にならない適当なシステムを作っても契約上の義務を果たしたということになりかねませんが、それは、善良なる管理者の注意をもって委任事務を処理したとは到底言えないでしょう。そこまで極端な話ではなくとも、要件定義に沿ったシステムを開発するという部分も含めて、受発注工数を定義しているはずです。「追加費用が必要となる」とはこれ如何に…?

 

 個人的には、委任契約において瑕疵担保責任が定められていない民法の趣旨に鑑み、委任事務の処理の過程において、受任者が善管注意義務に反して成果物に瑕疵を生じさせ、その結果、委任者が何らかの損害を被った場合、委任者としては、民法第634条に定めるような特別の法定責任を追及することは出来ずとも、受任者の債務不履行責任(民法第415条)を追及することは可能であろうと思います。

※ 近年の裁判例では、ITベンダーについて、善管注意義務の一種として、常に進捗状況を監視し、開発作業を阻害する要因の発見に努め、適切に対処するといった「プロジェクトマネジメント義務」を負うと判示するものもあります。

 

 準委任契約は請負契約よりも責任が軽い、あるいは責任を負わなくてよいと誤解しているベンダーが多いですけど、認識を改められた方が良いのでは…?と思いますね。

 

 上記については、純粋な準委任契約の話なので、まだベンダー側の言い分も分からなくはないです。

 しかし、SES契約の中には純粋な準委任契約とは言えないものもあり、当事者が別途合意することにより、仕事の完成および目的物の引渡しを定めることができるという契約もあります。要するに、準委任契約と請負契約の複合型無名契約ですね。

 仕事の完成義務を定めた場合、請負契約としての性質も有しているので、民法の請負の規定が適用されると考えられますが、この点を全く理解しておらず、「これはSES契約だから」という一点張りで、頑なに成果物についての責任を拒否しようとするベンダーもいます。

 

SES契約だから何だってんだよ…。

 

 契約の性質は当事者の意思を合理的に解釈して決せられるので、たとえ、契約書の表題が「SES契約」となっていようが、「準委任契約」となっていようが、その内容を見て、準委任契約なのか、請負契約なのか、その複合型なのかが決まります。

 中身がどうであれ、「SES契約」とさえ謳っておけば、成果物については免責されると考えているのであれば、あまりに法律に疎い安直な発想と言わざるを得ません。

 

結語

 別にSES契約に限った話ではないのですが、業界特有のルールみたいなものがあり、時にその歪んだルールが法務担当者を苦しめるときがあります。上記SES契約における成果物の責任についても、社内の人間ですら、最初はこちらの言い分が通じませんでした(今でも100%理解されているわけではないと思います)。

 この契約書シリーズでは、いずれまた業界特有ルールについて触れるかもしれませんが、今回はこのぐらいで締めたいと思います。

 

 

【契約書】誠実協議条項は本当に不要なのか?

誠実協議条項不要論について

f:id:pochi-kohchou:20160902132750j:plain

 誠実協議条項(以下、単に「協議条項」といいます。)とは、契約書における条項や文言において、「別途協議のうえ決定する」とか、「契約の解釈について争いが生じた場合は双方誠実に協議して円満な解決を目指す」というように、「話し合って決めましょう・解決しましょう」という旨を定めた条項のことを指します。

 

 この協議条項につきましては、契約実務において根強い不要論があります。不要論の論拠は、筆者の知る限り、概ね以下のようなものです。

 

  1. 契約は十分な交渉・協議を重ねて締結するものであり、協議条項を設けるということは何も決まっていないのと同じである。
  2. トラブルになれば協議を実施することが困難なケースも多く、そもそも、協議条項がなくとも普通は協議ぐらいする。
  3. 契約自由の原則に基づき、当事者は合意によって契約内容を追加・変更できるのだから、協議のうえ決定するというのは当たり前のことを言っているにすぎない。
  4. 英米契約においては協議条項など規定されていない。

 

 但し、不要論者の中でもニュアンスが異なっており、「完全に不要」という論者もいれば、「不要だけれども、規定しておいて損はない」という論者もいるようにお見受けします。

 後者の原則不要論を採る論者は、協議条項について、話し合いによる平和的な解決を好む日本人の特質に合っているという点において理解を示しつつ、契約書に定めのない事項について解釈が分かれた場合には、本来、法令や慣習に基づく解釈適用が優先されるべきところ、協議条項の法的拘束力を肯定し、いきなり訴訟などの法的手続に出るのではなく、当事者の意思を確認する協議を優先させることが出来る点においてメリットがあることを認めていたりします(但し、そのような協議条項の拘束力には強い懐疑感を示されていることがほとんどです)。

 

 以上の議論を前提として、私は、「契約書の雑則規定としてよく見かける協議条項は不要であるが、個々の取引規定における協議条項は、場合によっては必要である」という立場です。この点について、以下詳述致します。

 

雑則規定としての協議条項

 契約書は、冒頭に目的規定や定義規定が置かれ、そのあとに支払条件などを含む取引条項が続き、最後の方に、解除条項や準拠法・合意管轄条項などの一般条項が規定されているということがほとんどです。

 そして、大抵の契約書には、一般条項(雑則規定)として、協議条項が定められており、その内容としては、「本契約に定めのない事項又は解釈上疑義を生じた事項については、甲乙協議の上、誠実に解決に当たるものとする。」といったものがほとんどです。

※ 契約書によって微妙に文言は異なりますが、ニュアンスとしてはどれも同じです。

 

 協議条項の不要論者の多くは、この雑則規定としての協議条項のことを指して、「不要」と主張しているのではないかと思いますが、この点については私もほぼ同意見です。

 理由は上述のとおりであり、多言を要しません。困ったら話し合いで解決するという考え方を貫徹するのであれば、そもそも、「契約自体が不要」という帰結になるような気がします。それに、どうしても訴訟ではなく、協議によって解決したいのであれば、協議条項に頼るのではなく、不起訴の合意をすべきです。

 

個々の取引規定における協議条項

 他方、個々の取引規定の中には、契約締結時点において、その内容を細部にわたって具体的に確定することができず、契約の履行過程における協議に委ねざるを得ないものや、そもそも当初から協議によって内容を決定することを予定しているものがあります。

 例えば、委任契約における費用負担などを想像してみてください。民法の規定によりますと、「受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後における利息の償還を請求することができる。」と規定されており(650条1項)、かかる規定は準委任契約にも準用されています(656条)。

 これが委任契約当事者間の費用負担の原則ですが、(準)委任契約においては、かかる原則は修正され、受任者が契約の履行過程で支出した費用は、原則として受任者の負担としつつ、別途協議したうえで、委任者の負担とされた費用について、受任者は当該費用を請求することができる、といった規定を置くことがあります。

 

 もし仮に、常に受任者の負担と定めたとすると、委任事務を処理するために、想定外の支出があった場合や、過大な支出があった場合であっても、受任者は当該費用を委任者に対して償還請求することができず、当事者の公平が害される結果となりかねません。

 それなら、受任者の費用負担の上限額や、受任者の負担とする費目を定めておけばいいじゃないかという考えも浮かびますが、単発の委任契約であるならばともかく、継続的役務提供契約のように、ある程度長期にわたって不定形的な業務を委託する場合、契約締結時点において、将来発生する費用をすべて想定することが不可能ないし著しく困難な場合もあります。そのような場合、上記協議条項は、有用なものとして機能するように思います(費用負担は、ほんの一例ですが…)。

 

 不要論者の主張するように、確かに、契約締結時点において、契約内容を全て具体的に定めることがベストですが、個々の取引規定の全てにおいて、それを貫徹することは、かえって取引を硬直化させ、不都合を生じさせる要因になりかねないというのが私の持論です。

 

まとめ

 私が思うに、不要論の根底には、「話し合いに応じてもらえないリスクを想定すべき」という性悪説があり、お互いの関係が良好であり、話し合うことが可能な状況であれば、協議条項など当たり前のことを言ってるに過ぎないというものです。この点については、まさにその通りですので、基本的には不要論に賛成です。

 ただ、最後の落としどころが「別途協議」になることも決して少ないわけではなく、不要論者が、協議条項を全て排斥して契約書を起案しているだとすれば、どうやって締結まで漕ぎつけているんだろう…と疑問に思ったりもします。

 

 なお、契約書においては、「合理的に判断される場合」「相当と認められるとき」「やむを得ない事由」といった曖昧・多義的な文言が使用されることもあり、個人的には、出来る限り、このような文言を使用しないように気を付けていますが、協議条項が不要というのであれば、このような文言についても、一義的な解釈しかできない表現にしているのでしょうか。

※ そうでないのであれば、いかなる場合をもって「合理的」「相当」「やむを得ない」と言えるのか、解釈が分かれてしまい、結局のところ協議が必要になるように思います。

 

 

警察官が巡回連絡で訪れてきたので、その時の会話内容を再現してみる。

巡回連絡とは?

 「巡回連絡とはなんぞや?」という方のために、少しだけ説明を加えると、巡回連絡とは、めちゃくちゃ簡単にいうと、警察が家やアパートを訪ねてきて、巡回連絡カードと呼ばれる個人情報票に、家族や勤務先などの連絡先を記入させるなどして、個人情報を収集する活動です。

 一応、巡回連絡には、犯罪の抑止や災害の防止といった公共の安全と秩序維持…という大義名分があります。例えば、留守中に空き巣が入ったとか、何らかの犯罪に巻き込まれたという場合に、家族などの関係者に迅速に連絡ができるようにするといった目的が挙げられます。なお、巡回連絡は、警察法2条が根拠条文となっているようです。

 

 私の住んでいるマンションは、オートロックとなっており、近くのコンビニに出かけようとして、マンションを出たところで、ポツンと立っていた警察官(巡査)らしき人が、私に声をかけてきました。

 

会話内容

警察官「すみません。ちょっと宜しいでしょうか?」

私「はい?」

警察官「このマンションの住人の方ですか?」

私「はい」

警察官「今、巡回連絡に来ていまして。〇〇さんではないですか?」

私「いえ、違います(誰だよ)」

警察官「ちなみに、何号室にお住まいの方ですか?」

私「えーと、どちら様なんですか?」

警察官「△△警察の者です」

私「何か事件の捜査ですか?」

警察官「いえ、巡回連絡です。巡回連絡とは・・・(長々と説明が続く)。ということで、巡回連絡カードへのご記入をお願いしています」

※このとき、個人情報が記載されている巡回連絡カードの実物を見せる

私「いえ、結構です」

警察官「巡回連絡カードは、警察の方で厳重に管理しておりますので、個人情報の流出はご心配いりませんが・・・」

私「え?今、巡回連絡カードを見せたじゃないですか」

警察官「はい?」

私「だから、厳重に管理してるはずの巡回連絡カードを一般人である私に見せたじゃないですか」

警察官「それは、例としてお見せしたのであって・・・」

私「いや、例として見せるのであれば、記載例とかサンプルを見せればいいのであって、実際に住人の方が記載した巡回連絡カードの実物を見せるのはマズいんじゃないですかね」

警察官「すみません、手元になかったものですから。ただ、巡回連絡の目的についてはご理解頂ければと思います」

私「いやぁ、よくわかりません。緊急連絡先などは貸主にも伝えていますし、なにかあれば貸主とか管理会社に聞けばいいと思います」

警察官「そうですか、では結構です」

私「もう宜しいですか?」

警察官「あ、すみません、オートロックを開けて頂けないでしょうか?」

私「え?インターホンありますけど?」

警察官「インターホンで呼び出しているんですが、出ていただけないので・・」

私「(知らねえよ)管理会社に問い合わせてみてはいかがでしょうか?」

警察官「かしこまりました。ありがとうございました」

 

まとめ

 何と言いますか、全然厳重に管理されてないじゃんって感じでした(ちょっと挙動不審な感じでしたし)。

 色々と調べてみたのですが、過去に巡回連絡や同カードを悪用して、犯罪にまで発展したこともあり、個人的には、全く協力する気が起きませんでした。。

 以上、警察から個人情報の提供を求められた際は慎重になった方が良いと思います…という話でした。