箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

加藤一二三先生のような年齢の重ね方をしたい。

おじいちゃん

 いやぁ、ひふみんこと加藤一二三先生、今やバラエティーにも引っ張りだこで大人気ですね。加藤先生のファンとしては嬉しい限りです。

 加藤先生といえば、当時史上最年少(14歳7か月)でプロデビューし、「神武以来の天才」と呼ばれ、棋界最高峰タイトルである名人位を獲得されたこともある将棋界のレジェンド。私のような若造が言うのも憚られますが、「加藤先生のご年齢の重ねられ方は素晴らしい」と思いますし、「自分も加藤先生のような年齢の重ね方をしたい」と思っています。

 これは、加藤先生のようなキャラになりたいという意味ではないですよ?(笑)加藤先生の姿勢、考え方、振舞いなどを拝見し、見習わせて頂きたいと考えている点がいくつもあるのです。

 

① 年齢を重ねられても謙虚さを失わない。

 加藤先生といえば、愛嬌のあるキャラクターで、可愛らしい仕草や発言が話題になっていますが、私が拝見していて「凄い」と思うのは、その謙虚な姿勢です。自分よりも一回りも二回りも歳下の相手に対して丁寧に敬語で接し、礼儀を欠かしません。

 将棋という礼節を重んじる世界を生き抜いてこられた賜物だと思いますが、普通の人が、簡単に真似できることではないです。誰しも、年齢を重ね、社会的地位が上がっていくにつれて、どこか「上からの態度」になってしまいがちですが、加藤先生は、むしろ「下からの態度」のようにすら思えます。

 加藤先生は、ご自身の戦績を自慢されることもありますが、それが嫌味っぽく聞こえないのは、普段の加藤先生の謙虚さがあってのことでしょう。

 

② 周囲の評価や雑音を全く気にしない。

 引退以前の話ですが、加藤先生が、順位戦で徐々にクラスを落とし、若手棋士に勝てなくなるようになると、「もう引退した方がいいのでは?」という声がささやかれるようになっていきました。失礼な言い方になってしまいますが、将棋関係者からすると「見苦しい」と思われるような姿だったのかもしれません。

 加藤先生の引退に密着したドキュメンタリー番組の中で、自ら「笑われると思いますよ」といった発言をされていたことから、加藤先生は、周囲のノイズをご存知であり、自分に対する周囲の評価を知りつつ、どこ吹く風で将棋を指し続けたのです。

 誰だって、少なからず周囲の評価を気にして生きています。同僚の評価、上司の評価、会社の評価。「周囲からどのように見られているか」ということを気にしつつ、世を渡り歩く術を身に付けていくのが普通です。しかし、加藤先生は、「周囲からどのように見られているのか」なんてどうでもよく、「自分が何をしたいのか」という点を真摯に追求されてこられたのだろうと思います。これもなかなか真似できることではありません。

 

③ 最後まで自分の信念を貫き通す。

 加藤先生の代名詞といえば、「棒銀」という戦法です。これは、飛車先に銀を繰り出していって、飛車先を突破していくという破壊力抜群のアマチュアにも人気のある戦法なんですが、加藤先生はこの棒銀ばかりを指し続ける棋士として有名です。

 さすがに、どんなに強いプロ棋士でも、同じ戦法ばかりを指し続けると、対戦相手に研究されてしまい、思うように勝てなくなります。実際、羽生さんがあれだけ活躍されているのは、ありとあらゆる戦型を指しこなすことが出来るからです。そうやって、戦い方のバリエーションを増やして勝率を上げようとするのが普通です。

 しかし、加藤先生は棒銀ばかりを指す。自分の戦法が研究され尽くしているということも承知の上で。私は、良し悪しは別として、その姿に美学と言いますか、人並ならぬ信念の強さを感じるんです。おそらく、指そうと思えば、他の戦型を指すことも出来るはずなのに、「棒銀が一番強い」と信じ、「棒銀を究める」と心に決められたのではないでしょうか。普通の人が、「もう棒銀は限界だな。他の戦法を指そう」と思うところを、そうならないのが、加藤先生の凡ならないところなんです。

 

④ 喜寿にして未だ衰えないチャンレンジスピリット。

 また、加藤先生は、14歳でプロデビューして以来、77歳で引退されるまで、実に63年にも及ぶ棋士人生を歩まれてきました。普通のサラリーマンであれば、会社を退職して、余生を過ごしている年齢です。「もう現役はいいか。後進に道を譲って、自分は身を引こう」と思うのが普通の年齢なんですよ。その年齢から新しいことにチャレンジするなんて、尚更難しいでしょう。

 しかし、やはり加藤先生は凄い。引退が決定した日の翌日の飯島七段との対局では、これまでになかった新しい手を指すなどして、飯島七段に勝利(現役最後の勝利であり、最高齢勝利記録にもなった対局)。また引退後は、ワタナベエンターテインメントとマネジメント契約を締結するなどして、タレント活動にも従事。バラエティー番組では、色んなタレントさんと楽しいトークを繰り広げられています。もうすぐ傘寿を迎えようとしている方の行動力とは思えません。

 

 私は、年齢で言いますと、加藤先生の半分も生きていませんし、学ばないといけないこともたくさんあるのですが、77歳を迎えたときに、「最後まで自分自身に挑戦し続けてきた」と胸を張って言えるような年齢を重ねたいなと思います。そして、加藤先生のように、子どものような屈託のない笑顔で笑いたいですね。

 

ヒカル氏の謝罪動画について(最後にします)

 当ブログでは、以下のとおり一連のVALU炎上問題について、個人的な意見を書いてきました。

 

 9月4日付で、ヒカル氏らが謝罪動画を公開されましたが、この動画を拝見しましても感想は変わりません。本件は、ヒカル氏及びVAZ社のリスクマネジメント不足。その一言に尽きると思っています。どういう経緯だったにせよ、社会的影響力のある人のもとには、それ相応のリスクがつきまといます。そのリスクを正しく認識できず、必要十分な措置を講じることができなかったことが本件の原因ではないでしょうか。

 

 残念ながら、ヒカル氏らはYouTuberとしての活動を無期限休止するということであり、何らかの形でメディアに露出する可能性はゼロではないにせよ、動画がアップされることは当分ありません。現在、VAZ社とVALU社との間で法的紛争に発展しているとのことであり、もし訴訟になれば、新たな事実も判明するかと思いますが、この一連の騒動についての記事としては、ひとまず最後としたいと思います。

 

 

1. VAZ社内での関係性・役割など。

 「結局、リスクマネジメント不足が引き起こした問題」と、繰り返し感想を述べても仕方ありませんので、最後は、内部統制上の組織マネジメントの問題について考えてみます。すなわち、VAZ社としては、ヒカル氏らと協働するにあたって、どのような経営体制を敷くべきだったのかという点です(これについては、情報が不足しているため、私の推測が多分に含まれています。ご容赦ください)。

 なお、会社法の視点に基づいて記事を構成していますが、VAZ社が不法行為責任の主体となるかといった議論はまた別の問題であり、本記事では深くは立入りません。

 

(1) ヒカル氏とVAZ社との関係

① ヒカル氏がVAZ社にアサインし、NextStageを結成するまでの経緯

 ヒカル氏が過去に公開した動画内での発言を参照すると、当初、VAZ社の森代表が、ヒカル氏に新事務所設立の話を持ち掛け、これにヒカル氏ら(ラファエル氏、禁断ボーイズ)が乗っかかる形で、NextStageという事務所が設立されたと発言していたように記憶・認識しています。

 但し、「事務所」という表現を使用していますが、UUUMとは異なり、それ自体独立した法人ではなく、VAZ社内で結成されたユニットグループのような位置づけであると思われます。例えて言うのであれば、ジャニーズ事務所内での「嵐」や「TOKIO」みたいな存在ではないかと。

 

② ヒカル氏のVAZ社内での役職・ポジション

 その後、ヒカル氏は、VAZ社の執行役員に就任しています。通常、執行役員は、従業員のうちの誰か(社内で重要なポジションにある上位役職者など)が任命されることが多いのですが、ヒカル氏とVAZ社との契約関係は不明です。

 この点、VAZ社は、ヒカル氏らYouTuberのことを「当社所属YouTuber」「当社所属クリエイター」などと呼称しており、ここから推測するに、専属的・独占的なタレント契約のようなもの(※1)を結んでいたのではないかと想像します(そうでなければ、「当社所属」とは言わないでしょう)。ただ、信頼ベースでの取引ではありがちですが、口頭だけで話を進めて、契約書が存在しないという可能性も勿論あります。これは後述の井川氏も同様です。

(※1)例えば、VAZ社が企業案件を引っ張ってきて、それをヒカル氏らに提供するかわりに、ヒカル氏らは、VAZ社以外との間で代理店契約を締結しない…など。独占的代理店契約と言った方が分かりやすいかもしれません。

 

 まあ、その点はさておくとしても、「執行役員」とは、取締役会などの会社上層部が決定した事項を執行する役割を担う現場責任者などを指します。「役員」という文言が入っていますが、会社法上の概念ではなく、取締役などの会社法上の「役員」とは異なります。ただの社内外の肩書き(敬称)であり、登記事項でもありません。取締役の下で業務執行に当たりますが、会社の意思決定を行うわけではありません。但し、法人税法上は、このような執行役員についても、会社経営に従事している場合は、役員とみなされることがあります(いわゆる『みなし役員』)。

 もし、この「執行役員」という肩書きを額面通りに受け取るならば、ヒカル氏は、重役ポジションにいきなり就いたということになります。普通のサラリーマンだったら大出世です。会社の意思決定までは出来ないものの、かなり大きな裁量を持ち、会社にも大きな影響力を及ぼすことができるポジションです(もし額面通りだったらね)。

 

(2) 井川氏とVAZ社との関係

 もう1人の重要人物である井川氏とVAZ社との関係についても考察するに、井川氏の肩書きは「顧問」であり、これも会社法上は何の意味もありませんし、明確な定義もありません。

 一般的には、「顧問弁護士」「顧問税理士」のように、外部の専門アドバイザーのような存在を指す際の肩書きです。通常は、そのような外部アドバイザーとの間で、アドバイザリー契約とか、コンサルタント契約とか、顧問契約(委任契約、準委任契約)を締結します。

 

 井川氏とVAZ社との契約関係も不明ですが、井川氏はYouTuberではないため、上記ヒカル氏とVAZ社との関係とは異なります。これも推測でしかありませんが、井川氏は、ヒカル氏のビジネスに関する師匠に当たる存在であり、ヒカル氏の推薦により、VAZ社の経営に参画したのではないかと思っています。

 ただ、井川氏は、NextStageのマネージャーを務めていたとのことであり、NextStageのオフ会の運営等のほか、自身の人脈を活かして、ヒカル氏の人脈づくりに協力するなど、ヒカル氏らNextStageのメンバーの活動をサポートするような裏方の役割を担っていたのではないかと想像します。

 

(3) 小活

 以下、ヒカル氏とVAZ社との間には、専属的なタレント契約のみが存在し、井川氏とVAZ社との間には、NextStageのマネジメントなどに関するアドバイザリー契約(コンサルタント契約)のみが存在したと仮定します。

 要するに、ヒカル氏は、VAZ社の看板タレントでありつつ、業務執行権限を有する現場の重役、井川氏は、そのような看板タレントをマネジメントする外部アドバイザーというポジションです。いずれも社内では重要なポジションですね。

 

 但し、会社法上は話が別です。ヒカル氏・井川氏に付与された「執行役員」や「顧問」という肩書きは、単なる敬称にすぎず、彼らは、VAZ社の取締役の地位にないため、株主や会社に対して、会社法上の責任を負う立場になく、VAZ社を代表できる権限を有していません。

 つまり、会社法上(内部統制上)は、取締役の監督支配下に置かれ、取締役の指示に従って行動しなければならない立場にあったと言えます。もし、自らの監督支配下にある執行役員等が、会社に損害を与えたとなれば、取締役は、管理監督を怠ったことによる任務懈怠責任などを追及されうるケースだと思われます。

 

2. 取締役による管理監督は及んでいたか。

 では、取締役によるヒカル氏らに対する管理監督は及んでいたのでしょうか。この点につきましては、森代表の発言などを参照しつつ、以下のとおり整理します。

 

(1) 日常的な業務管理体制について

 森代表は、「所属するクリエイターの活動について逐一報告するようにという体制は取っていません。ですから、新しいSNSを始めることについても、今まで追及してこなかった。」と、メディアのインタビューに答えていることから、ヒカル氏らに限らず、所属YouTuberの自主性を尊重し、その活動の細部を管理するような体制は、会社の方針としても取っていなかったということが伺えます。

 但し、「ぼったくりガチャ」のように、VAZ社とヒカル氏が連携してリリースしているアプリもあり、時として、お互いが意思疎通を図りながら協働するということも勿論あっただろうと思います。

 

(2) VALU問題について

 VALU問題について、森代表は、ヒカル氏らがVALUに登録していたことは知っていたが、企画の趣旨は知らされていなかったと発言しており、会社のトップにすら情報がほとんど共有されていなかったことが分かります。事実、謝罪動画の中でも、一度も森代表の名前は出てきません。

 また、本件にアドバイザーのような役割で関わっていたとされるVAZ社従業員も、下記インタビュー記事に掲載されているVAZ社の回答によれば、業務としてではなく、個人的に関与していただけとのことであり、VALUを利用した企画は、VAZ社内でコンセンサスを得られたものではなく、ヒカル氏、井川氏らの独断によって進められていたことも分かります。

 

 さらに、謝罪動画内でのヒカル氏の発言によれば、VALUについての相談相手は、井川氏や、個人的に関与していたとされるVAZ社従業員、VALUと密に繋がりのある人物であり、その他VAZ社の責任者に相談・報告するといったことはなかったということが伺えます。

 その結果、ヒカル氏らがVALUを売却し、騒動が大きくなるまで、森代表は事態に気づかないという状況でした(しかも、ツイッターなどで大きな騒動になっていることを友人から知らされて、事態の大きさに気づいたとのことであり、ヒカル氏・井川氏らから連絡を受けて気づいたわけではない)。

 このことから、VALU問題についても、取締役による管理監督が及んでいたとは到底言えないと思われます。

 

(3) 肩書き・職位の対外的使用について

 もうひとつ重要なことは、ヒカル氏らは、対外的に「VAZ社の執行役員や顧問であること」を公言し、「VAZ社の関係者」として行動していたという点です。

 彼らが「VAZ社の関係者」であることに違いはないと思いますが、上述のとおり、代表権限を有しておらず、VAZ社を代表できる地位にありません。もし、VAZ社名義で何か取引を行うのであれば、VAZ社から別途代理権を付与されている必要があります(もし、VAZ社の従業員(使用人)だったのであれば、VAZ社の社内ルールに則って、決裁権者による承認が必要となります)。

 

 VALU問題におきましても、VALU社が、ヒカル氏の謝罪動画に呼応して公開した反論文によると、やり取りを行っていた相手方について、「VAZ社側の関係者」や「VAZ社」という表現を用いていることから、VALU社とやり取りを行っていた人物(誰であるかは分からない)は、VAZ社所属のYouTuberをVALUアサインして、企画をやるということが、VAZ社内でコンセンサスを得られた決定事項ではないにもかかわらず、あたかもVAZ社内で決定された事項であるかのように装って連絡を行っています(※2)。

(※2)但し、VALU側は、ヒカル氏と直接のやり取りを行っていないとのことであり、これが真実だとすれば、連絡を行っていた人物は、ヒカル氏以外の者ということになります。

 

 このあたりは事実関係が極めて不透明ですが、もし仮に、ヒカル氏・井川氏らが、VAZ社の商号を使用して営業活動等を行い、VAZ社から付与された肩書きを利用して、あたかもVAZ社を代表する権限を有しているかのような言動を行っていることを、VAZ社の取締役が認識しつつ、これを黙認・放置していたのだとすれば、虚偽の外観作出に関与したものとして、非常に大きな問題になるものと思われます(※3)。

(※3)場合によっては、商法第14条(名板貸人)や、会社法第354条(表見代表取締役)の類推適用なども問題になる可能性があると思われます。

 

3. VAZ社の組織マネジメント上の誤り

 以上をまとめますと、

  1. 両者間の契約関係は定かではないが、ヒカル氏らは「執行役員」や「顧問」といった社内の重要ポジションに就いていた。但し、会社法上の役員としての責任を負わず、会社を代表する権限も有していない。
  2. VAZ社の取締役は、そのような要職の地位にあるヒカル氏や井川氏を十分に管理監督出来ていなかった。

 

 ということになるかと思います。

 …まずですね。VAZ社としては、別に、ヒカル氏や井川氏を、自社の専属YouTuberや執行役員や顧問にせずとも、外部委託先のひとつと位置付ければ良かったと思います。

 ヒカル氏や井川氏が、VAZ社の要職につく人間として、VAZ社を代表するかのような行動に及んだがために、現在、VALU社とVAZ社との間で大きな揉め事になっていますが、そんなポジションを付与せず、お互いが独立した存在であれば、本件も、VALU社とヒカル氏ら個人との間の問題になっていたはずです。

 組織マネジメント上、会社のコントロールが及ばない人物を社内の要職に就かせることほど大きなリスクはありません。超特大の爆弾を抱えているようなものです。

 

 どうしても、ヒカル氏ら人気YouTuberを独占したいのであれば(あるいは、ヒカル氏らがVAZ社の経営への参画を望んだのであれば)、株主を説得して、ヒカル氏や井川氏を取締役として迎え入れて、経営責任を負わせるか、あるいは、ヒカル氏らに対して、自社のコントロールを及ぼす方法を考えるべきだったと思います。

 例えば、NextStageのマネジメント責任者に、自社の人員を設置し、適宜、取締役などの役員に対して、活動内容や問題点を報告する仕組みを作るなど(どこの企業でも当然のようにやっていることです)。NextStageは、VAZ社の売上にも相当貢献していたと想像しますが、その業務内容を、代表者が把握できない時点で、内部統制上は大問題だと思います

 

 VAZ社は、資本こそ大きいものの、設立年数が浅い(2年程度)スタートアップ企業であり、危機管理体制が十分に整備出来ていないにもかかわらず、自社の予想に反して、売上規模が爆発的に伸びてしまったがために起こってしまった悲劇という見方もできます。

 今回の件を踏まえ、井川氏は顧問を辞任し、ヒカル氏らは無期限活動休止、NextStageの解散と、怒涛の展開となりましたが、VAZ社にとっては、組織体制を刷新する絶好の機会なのかもしれません。今後の展開についても関心をもって見ていきたいと思います。

 

※ 本記事は筆者の推測や解釈が多分に含まれています。もし、重大な事実誤認等ございましたらご指摘頂けますと幸いです。

なんでカナル型イヤホンばかりになっちゃったの?

カナル型イヤホン

 もし、家電量販店とか音楽機器メーカなどにお勤めの方がいらっしゃったら教えて頂きたいことがあります。

 

なんで、最近の家電量販店などのイヤホンコーナーにはカナル型(耳穴に差し込むタイプ)のイヤホンばかり置いているの…?

 

 私は、スマホとかウォークマンに元から付属しているイヤホンを使うタイプでして、正直、音質とか何のこだわりもありません。聴こえるんだったら何でも良いって感じです。

 んで、iPhoneを購入したときに付いていたApple純正のイヤホンをずっと使用していたんですが、イヤホンジャックの接続部分がおかしいのか、勝手にSiriやボイスコントロールが起動する現象が頻発し、イヤホンを買い替えることにしたんです。

(これらの機能をオフにすることでも問題解消するらしいのですが、せっかくなんで買い替えることにしました)

 

 そしたら、私が訪ねた家電量販店では、カナル型のイヤホンがずらりと並び、なんとオープンイヤー型(昔の主流だった平たいタイプ)のイヤホンはたった1個だけ。しかも、そのイヤホンは売れ残りらしく、一番下の段に、ぽつんと「在庫処分大特価」のシールが貼られ、500円ぐらいで売られていました。やべえ、めっちゃ可哀想…(買わなかったけどね)。

 

 私は、カナル型が主流なのは知っていました。音漏れしにくいといったメリットがあるのも分かります。ただ、オープンイヤー型を市場から消し去るほどの万能アイテムか…?と、大いに疑問を感じております。はい。

 実際のところ、私は全くカナル型イヤホンが合わず、すぐに耳が痛くなってしまうタイプでして(私と同じようなタイプの人も少なからずいらっしゃると信じたいです)、結局、お店に売っていないためネットでポチったんですが、いやぁ、時代は変わったもんですねぇ。昔はオープンイヤー型しかなかったのに…。

 

 イヤホンについて、ちょっと困り、ちょっと疑問に感じたというお話でした。

ヒカルくん、俺はそうじゃないと思うんだよ。

 前回、当ブログにおいて、VALUの炎上問題について投稿しましたが、本件について、ヒカル氏が下記インタビュー記事のとおり、メディアの取材に応じました。

 

ヒカルくん。俺は、そうじゃないと思うんだよ…。

 

 インタビュー記事を読んだ率直な感想です。またまた、企業法務をしている立場からの余計な意見となってしまうかもしれませんが、どうしても書きたいのです。ご勘弁を。

 

 インタビューの冒頭、VALU問題について謝意を示し、その経緯を説明したあと、ヒカル氏は、今後のことを聞かれて、次のように回答しています。

YouTube以外の知識の及ばない分野には二度と手を出さないと決めました。

 

 これには、理解を示せる部分とそうではない部分があります。

 まず、VALUで炎上してしまった直後ですから、自分のよく知らない分野に迂闊に首を突っ込むべきではないという心理になるのは分かるし、意気揚々と「これからも、色んなことに挑戦していきます」なんて言えないのも分かります。そんなことを言えば、「反省してねえだろ」と言われかねない。

 

 ただですね。「知識の及ばない分野」というのが、どこまでの範囲を指すのか不明ですが、ヒカル氏の動画を観ていて、私が「凄いな」「面白いな」と思ったのは、今まで誰もやらなかったことに積極的に挑戦していく姿勢です。宝くじを100万円分購入したり、売り切れになるまでガチャを引いたり。

 そこが面白いポイントでしたし、ヒカル氏の「売り」でもあったのに、「YouTube以外の知識の及ばない分野には二度と手を出さない」って、自分の良さを捨てるつもりなのか…?

 

 もうひとつ。新しい分野、自分の知識の及ばない分野に手を出したのが悪かったのではない。そこが原因だと思っているなら、はっきり間違っていると言いたい。

 VALUを始めたこともそうですし、最近で言えば、関西コレクションに出演することも別に悪いことではない。「どんなリスクがあるのか」ということをちゃんと適切に分析・確認しなかったのが原因なんです。法的リスクやレピュテーションリスクを含めて。

 

 VALUを始めた際も、VALU取引にはどんなリスクがあるのかという点を確認し、VALUを売却する行為について、「詐欺に当たる可能性がある」「炎上するおそれがある」ということが事前に分かっていたのであれば、売却行為には及ばなかったでしょうし、あんなことにはならなかった。

 また、関西コレクションの入場チケットを、同日開催のオフ会に転用することについても、事前に「関西コレクション側に対するイベント妨害になる」ということが分かっていたのであれば、別の方策を検討することだって出来たはず。

 

 どの企業だって、新しい未知の分野に挑む際、そうやってリスクを分析し、事前・事後のリスクヘッジを図ることで、危機管理を行っている。ヒカル氏が反省すべきは、リスクマネジメントの視点が欠けていたことだ。

 そして、私が想像するに、今のVAZ社にもその視点がないと思う。あれだけの売れっ子YouTuberを抱えているにもかかわらず、おそらく、動画の企画・内容についてリーガルチェックを入れていない。もし、リーガルチェックが入っているのであれば、「他人のクレジットカードを使用して買い物をする」なんて企画が通るはずがない。

 

 最近、同業であるUUUMが上場し、その際、コンプライアンスを強化していくといった所信を表明されていましたが(上場する以上、当然なんですが)、コンプライアンスやリスクマネジメントの視点が欠けたまま、YouTuberとしての活動を続けても、根本的な問題解決にはなっていないということを声を大にして言いたい。

 

ヒカルくん、俺はそうじゃないと思うよ。

Youtuberヒカル氏のVALU炎上問題についてIT法務が思うこと。

 どうも、まさぽちです。

 

 以前、Youtuber ヒカル氏の動画にハマっているという記事を書いたんですが、現在、物凄い炎上を起こしていますね。。この件について、一応、IT業界で法務を務めている身として、思っていることや感じていることを書いてみたいと思います。

 

 ちなみに、厳密に言うと業界は違いますが、広いくくりで言いますと、ヒカル氏が執行役員を務めるVAZ社は同じIT業界であり、その勢いは聞き及んでいます。

 んで、あるとき、営業担当者に「ヒカルくんの動画好きなんですよねー」という話をすると、VAZ社との繋がりがあったらしく、「よかったら要ります?」ということで、ステッカーを頂きました。

VAZ

(しれっとパソコンに貼らせて頂いております)

 

 というわけで、業界的に近しい位置にあるため、一連の炎上問題は、法務として無視出来ないわけです。なお、ヒカル氏をはじめ、VAZ社が公式に発表している情報、一連の報道の中で明らかとなっている情報以上のことは知りません。そのため、2017年8月27日現在において公表されている情報を前提として、この記事を書いていることにご留意ください。

 

 

いちファンとしての苦言

 私が、まずもって気になったのは、「何故ヒカル氏らは、VAを高値で売り抜け、自分たちだけが利益を得たと誤解されるような行動に及んだのか?」という点(これは法律論云々ではありません)。

 

 ヒカル氏といえば、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの大人気Youtuberです(その他、ラファエルさん、禁断ボーイズのいっくんもYoutuber界で不動の人気を築いています)。自身のチャンネルで配信している動画の広告収入や、いわゆる「企業案件」と呼ばれるインフルエンサー広告での収入に加えて、自身が執行役員を務めるVAZ社での報酬などもあるはず。その年収はウン億円とも言われています。

 んで、今回の売り抜けによって、ヒカル氏らは数千万円の利益を得たと言われていますが、ヒカル氏らの収入から考えれば、詐欺を疑われるようなリスクを冒してまで、そのような利益を得るメリットなんて何もないはずです(実際、本人もそのように説明しています)。

 

 真意は本人たちにしか分かりません。VAを高値で売り抜け、そこで得た利益を、株主(VALUER)に還元しようと思っていたのかもしれないし(後掲インタビュー記事中の森代表の発言の中に、そのようなことを伺わせる記述もある)、後日、その行動の意味をちゃんと説明するつもりだったのかもしれない。しかしですね。いちファンとしては「もっと自分の立場や影響力を考えて行動出来なかったのか?」と非常に残念に思います。

 ヒカル氏の動画では、店長との楽しい掛け合いを見て、いつも和ませてもらっており、これからも楽しい動画を期待していたのに、以前と同じようには見れないかもしれませんね。。頑張って欲しいとは思いますが。

 

 はい。ここまでは、いちファンとしての意見でした。失礼しました。

 

主にVAZ社の事前・事後対応について

 私が、次に疑問に感じたのは、主にVAZ社の事前・事後の対応についてです。

 

 こちらのインタビュー記事に掲載されているVAZ社の森代表の発言によれば、

  1. ヒカル氏らがVALUに登録していたことは知っていたが、どんな意図で開始したのかは知らされていなかった。
  2. 外部専門家及び法律専門家と連携して事実関係の確認を行い、プレスリリースを発表している。
  3. ヒカル氏ら所属Youtuberに対しては、自らが起こした騒動について収束を図るように話しているが、そのやり方は委ねている。
  4. 今までは、所属Youtuberの活動について逐一報告を求めるような体制はとってこなかったが、今後はこのようなことがないように対策を取っていかなければならない。
  5. VAを売却したことで株主から批判が集まることは想定できていなかった。
  6. 法律の専門家に相談し、今回の行為は詐欺にあたらない、法律に抵触していないという結論が出ており、これを説明していくしかない。
  7. ヒカル氏は買い戻しをすることで、VALUの件に関しては一旦は最善を尽くしており、その上で自分が世間を騒がせ、関係者に迷惑をかけてしまったことに関しては、自分がいかに世の中に貢献できるか、社会に貢献できるかを見せることしかないと思っている。

 

 とのことです。私は、この発言を聞いて、正直なところ、VAZ社のリスクマネジメントは、とても褒められたものではないと思いました。以下その理由です。

 

① 引き金はマネジメント不足

 上記のうち、まずは1、3、4の発言について。

 森代表は、ヒカル氏らがどんな意図でVALUを始めたのかも、VAを売却することも知らされていなかったとのことですが、所属Youtuberの普段の活動を管理していない理由のひとつとして、「私たちはYouTube上のマネジメントをするプロダクションですから」と説明しています。私は、この発言が、今のVAZ社内での力関係を如実に表わしていると感じました。

 例えば、テレビタレントを養成して、テレビ局に売り込んでいきたいと考えている芸能プロダクション事務所があったとして、所属タレントのテレビ番組内での振舞いや発言、パフォーマンスだけをマネジメントする事務所があるでしょうか?芸能プロダクションの世界を全く知らない者の意見で大変恐縮ですが、おそらく、普段の私生活においても、品位を損なわせるような発言・行動を慎むようにマネジメントするはずです。

 

 しかし、VAZ社は、ヒカル氏らのように既に人気のあったYoutuberらが会社の中心となって回っています(現に、ヒカル氏は執行役員としてVAZ社の経営に参画しています)。そのため、上下関係とまでは言いませんが、当初からVAZ社はヒカル氏らの人気Youtuberをコントロールできず、コントロールする気もなかったように思うのです。上記3でも、炎上の収束を本人たちに委ね、自らの発想で解決する方法を考えてほしいと話していますが、「自分たちの手には負えない」というようにも聞こえます。

 このように、事前対応として、Youtuberの普段の行動をマネジメントできていなかったのですから、今回の炎上は起きるべくして起きたものだと思います。

 

② 初動対応に見る様々な疑問

 仮に所属Youtuberをちゃんとマネジメントしていたとしても、何かしらの問題は起きます。これはどの業界・企業にも共通する問題であり、だからこそ、炎上に対する事後対応が極めて重要になってくるのですが、私が見る限り、VAZ社は、炎上リスクを適切に想定できていませんし、それに対するリスクヘッジも検討・準備できていません。それが、2、3、5、6の発言及び初動対応から読み取れます。

 

 まずですね。VAZ社は、外部専門家・法律専門家と連携して調査を行い、8月17日にプレスリリースを発表していますが、この時点で(というか今も)まだ騒動は収まっておらず、それどころか、炎上の最中です。ヒカル氏らに対する猛烈な批判が集中している真っ只中ですよ。この時点で、「VALUER への優待を設定すると言った事実はなく、実際に設定をしたことはない(欺罔行為を行っていない)」「インサイダー取引ではない」といった、自分たちにとって有利になる事実を示して釈明するなんて正気の沙汰ではないです。火に油を注いでいるようなものです。

 「詐欺だろ」「インサイダー取引だろ」と追及されて、「詐欺ではない」「インサイダー取引ではない」と反論したくなる気持ちも分からなくはないですが、最初のプレスリリースは、「世間をお騒がせしてしまったことに対するお詫び」に徹し、事実関係については引き続き調査を行い、しっかりと事実関係が確認できた段階で、時期と内容を見定めて出すのが鉄則です。初動からしておかしい。

 

 また、外部専門家・法律専門家と連携した調査についても疑問が残ります(なぜ『顧問弁護士』とか『外部弁護士』と言わずに、『法律の専門家』と言うのかと突っ込まれていますが、そこは正直どうでもいいです)。

 森代表は、騒動を知った後、8月16日の朝にヒカル氏と電話で話し、その後、法律の専門家を交えて事実関係を確認し、翌17日にプレスリリースを出していますが、法律の専門家が、たった1日聞き取り調査をしたぐらいで、その内容をプレスリリースで発表しても良いと判断するとは到底思えません。もし、それを了承したのだとしたら、「本当に法律の専門家か?」と疑います。おそらく顧問契約を結んでいる顧問弁護士などではなく、VAZ社やヒカル氏らに対して、何ら契約上の責任を負わない外部の弁護士等であり、法的見解を聞かれたから答えた…という感じじゃないでしょうか。その後のことは知らないよってな具合に。これも想像でしかありませんが。。

 いずれにせよ、いざ何か問題が起こった際に、それをちゃんと相談できる外部専門家がおらず、そのような外部専門家との連携も取れていなかったように映ります。法務の立場から見ますと、本件は顧問弁護士による対応だとはとても思えません。そして、もし、日常的に法的アドバイスを受けられる顧問弁護士がいないのだとすれば、法的リスクに対する考え方が相当甘いと思います。

 

③ 炎上収束のポイントはそこじゃない。

 また、VAZ社およびヒカル氏の炎上を収束させるための観点がズレています。

 森代表は、上記6のとおり、「法律の専門家に相談し、今回の行為は詐欺にあたらない、法律に抵触していないという結論が出ており、これを説明していくしかない」と発言し、後日、ヒカル氏もTwitter上で、弁護士ドットコムの記事を紹介し、詐欺罪ではないと釈明していますが、法的見解をぶつけるべき相手と炎上が起こるメカニズムを全く分かっていないように思います。

 

 自分たちは違法ではない、詐欺ではないと思うなら、それでいいんです。堂々としていればいい。真実として心の底からそう思うなら一歩も譲る必要はない。それでも、「これは詐欺だ」と主張する人がいるのであれば、裁判において明らかにしていけば良いだけの話です。法的見解をぶつけるべき相手は、原告や検察官や裁判官であって、世間ではありません。ただ、どのような事実があったのかという点については、これを説明する義務があるので、然るべき時期を見て、然るべき内容を発表する必要があると思いますが、あくまでも事実を摘示するだけで、それに対する法的評価はしない。

 なぜなら、炎上は理屈ではなく憎悪や批判感情によって引き起こされているからです。感情的に怒っている人に対し、理屈で対抗することの虚しさをご存知ありませんか?理屈で対抗すれば、何を言い訳してんだと更に逆上させる要因にもなりかねませんし、反論の糸口を与えることにもなります。

 

 ネット炎上は、得てして粗探しです。その人の身元が特定され、SNSなどでの過去の発言が掘り起こされて、そこを攻撃されます。攻撃することが目的化しており、納得できるかどうかは問題ではありません。現にそういった攻撃が起きています。どちらの言い分が正しいかという議論の場ではないということをちゃんと認識すべきだと思います。

 

さいごに

 繰り返しになりますが、ヒカル氏と店長との掛け合いが好きですし、ああいう動画をこれからも観たいと思っている一人です。だからこそ「なんでこんなことになっちゃったの?」という思いが強く、残念でなりません。ほんとに。