箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

加藤一二三先生のような年齢の重ね方をしたい。

おじいちゃん

 いやぁ、ひふみんこと加藤一二三先生、今やバラエティーにも引っ張りだこで大人気ですね。加藤先生のファンとしては嬉しい限りです。

 加藤先生といえば、当時史上最年少(14歳7か月)でプロデビューし、「神武以来の天才」と呼ばれ、棋界最高峰タイトルである名人位を獲得されたこともある将棋界のレジェンド。私のような若造が言うのも憚られますが、「加藤先生のご年齢の重ねられ方は素晴らしい」と思いますし、「自分も加藤先生のような年齢の重ね方をしたい」と思っています。

 これは、加藤先生のようなキャラになりたいという意味ではないですよ?(笑)加藤先生の姿勢、考え方、振舞いなどを拝見し、見習わせて頂きたいと考えている点がいくつもあるのです。

 

① 年齢を重ねられても謙虚さを失わない。

 加藤先生といえば、愛嬌のあるキャラクターで、可愛らしい仕草や発言が話題になっていますが、私が拝見していて「凄い」と思うのは、その謙虚な姿勢です。自分よりも一回りも二回りも歳下の相手に対して丁寧に敬語で接し、礼儀を欠かしません。

 将棋という礼節を重んじる世界を生き抜いてこられた賜物だと思いますが、普通の人が、簡単に真似できることではないです。誰しも、年齢を重ね、社会的地位が上がっていくにつれて、どこか「上からの態度」になってしまいがちですが、加藤先生は、むしろ「下からの態度」のようにすら思えます。

 加藤先生は、ご自身の戦績を自慢されることもありますが、それが嫌味っぽく聞こえないのは、普段の加藤先生の謙虚さがあってのことでしょう。

 

② 周囲の評価や雑音を全く気にしない。

 引退以前の話ですが、加藤先生が、順位戦で徐々にクラスを落とし、若手棋士に勝てなくなるようになると、「もう引退した方がいいのでは?」という声がささやかれるようになっていきました。失礼な言い方になってしまいますが、将棋関係者からすると「見苦しい」と思われるような姿だったのかもしれません。

 加藤先生の引退に密着したドキュメンタリー番組の中で、自ら「笑われると思いますよ」といった発言をされていたことから、加藤先生は、周囲のノイズをご存知であり、自分に対する周囲の評価を知りつつ、どこ吹く風で将棋を指し続けたのです。

 誰だって、少なからず周囲の評価を気にして生きています。同僚の評価、上司の評価、会社の評価。「周囲からどのように見られているか」ということを気にしつつ、世を渡り歩く術を身に付けていくのが普通です。しかし、加藤先生は、「周囲からどのように見られているのか」なんてどうでもよく、「自分が何をしたいのか」という点を真摯に追求されてこられたのだろうと思います。これもなかなか真似できることではありません。

 

③ 最後まで自分の信念を貫き通す。

 加藤先生の代名詞といえば、「棒銀」という戦法です。これは、飛車先に銀を繰り出していって、飛車先を突破していくという破壊力抜群のアマチュアにも人気のある戦法なんですが、加藤先生はこの棒銀ばかりを指し続ける棋士として有名です。

 さすがに、どんなに強いプロ棋士でも、同じ戦法ばかりを指し続けると、対戦相手に研究されてしまい、思うように勝てなくなります。実際、羽生さんがあれだけ活躍されているのは、ありとあらゆる戦型を指しこなすことが出来るからです。そうやって、戦い方のバリエーションを増やして勝率を上げようとするのが普通です。

 しかし、加藤先生は棒銀ばかりを指す。自分の戦法が研究され尽くしているということも承知の上で。私は、良し悪しは別として、その姿に美学と言いますか、人並ならぬ信念の強さを感じるんです。おそらく、指そうと思えば、他の戦型を指すことも出来るはずなのに、「棒銀が一番強い」と信じ、「棒銀を究める」と心に決められたのではないでしょうか。普通の人が、「もう棒銀は限界だな。他の戦法を指そう」と思うところを、そうならないのが、加藤先生の凡ならないところなんです。

 

④ 喜寿にして未だ衰えないチャンレンジスピリット。

 また、加藤先生は、14歳でプロデビューして以来、77歳で引退されるまで、実に63年にも及ぶ棋士人生を歩まれてきました。普通のサラリーマンであれば、会社を退職して、余生を過ごしている年齢です。「もう現役はいいか。後進に道を譲って、自分は身を引こう」と思うのが普通の年齢なんですよ。その年齢から新しいことにチャレンジするなんて、尚更難しいでしょう。

 しかし、やはり加藤先生は凄い。引退が決定した日の翌日の飯島七段との対局では、これまでになかった新しい手を指すなどして、飯島七段に勝利(現役最後の勝利であり、最高齢勝利記録にもなった対局)。また引退後は、ワタナベエンターテインメントとマネジメント契約を締結するなどして、タレント活動にも従事。バラエティー番組では、色んなタレントさんと楽しいトークを繰り広げられています。もうすぐ傘寿を迎えようとしている方の行動力とは思えません。

 

 私は、年齢で言いますと、加藤先生の半分も生きていませんし、学ばないといけないこともたくさんあるのですが、77歳を迎えたときに、「最後まで自分自身に挑戦し続けてきた」と胸を張って言えるような年齢を重ねたいなと思います。そして、加藤先生のように、子どものような屈託のない笑顔で笑いたいですね。