箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

コンプラ研修会の振り返り(続き)

 前回からの続き(補足)です。

 

 今回、コンプラ研修会をやってみて、自分で気づいた点がほかにもあったので、追記したいと思います。

 

 今回強く思ったのは、「コンプライアンスの正しい知識を身につけてもらう」というような一方的な視点をもつのではなく、「これを機にコンプライアンスの問題を考えてもらう」という視点を持つことが重要なんじゃないかという点。

 短時間の研修会で出来ることは限られていますし、一度の研修会でコンプラ問題を全て理解してもらうのは無理な注文です。

 そうではなく、「日常業務にコンプラ意識をほんの少しでもいいから持ち帰ってもらう」「毛の先程度でもいいからコンプラ問題を考えてもらう」という視点から、資料やスライド、説明を組み立てる。コンプラ担当者が一方的に説明する部分は最小限度にとどめ、議論や検討の時間を増やすといった工夫が必要だと思います。

 

 あと、細かい法律論はしない。絶対にしない。

 例えば、パワハラにおける「業務の適正な範囲」という文言解釈について、法的な議論を掘り下げていけばいくらでもできる部分ですが、文言解釈に固執するのではなく、具体的な事例に即して、「どちらとも取れる微妙なラインがある」という前提を示す。

(実際、当該範囲を明確に定義付けすることは困難であり、判例の積み重ねの中で、判断を分けた分水嶺や限界点を探ることに実務的な意義があります。…が、そんな法的議論を研修会において侃々諤々と行うことに意味はないと思います)

 

 そのうえで、「答えがないからこそ、常日頃からこういった問題を意識して取り組む必要がある」と論理を展開する。

 要するに、「業務の適正な範囲」という文言解釈をめぐる数多の裁判例を理解してもらうのではなく、「裁判でも判断が分かれるような微妙な問題を含んでおり、日常業務においても常に意識しておかなければならない」という点を理解してもらう。こちらは、あくまでも問題提起だけをして、その問題を考える機会を付与する。

 

 こんなところでしょうか。

 昔、コンプライアンス研修会を実施した際、「大学の講義を受けているみたいで難しかった」「あまり理解できなかった」というご感想・ご意見を寄せて頂いたことがあります。

 正直そのときは「負けた」と思いました。完全に独りよがりの内容になっており、自分が一人で理解して、自己満足に浸っているだけだったからです。そのときから、「分かりやすかった」「理解できた」と言って頂けるような内容を目指そうと思ってやってきましたが、「今後自分でも考えてみようと思う」と言って頂けるような内容を目指そうと思います。