箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

ドメインの更新手続を忘れていたというお話

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はてなブログPROにアップグレードし、独自ドメインで当ブログを運用するようになってから、ちょうど1年ぐらいが経ちました。1年前に書いた記事がこちら↓

 

今回お話したいことは、独自ドメインに移行した後にアクセス数がどうなったとか、そういうことではなく、ドメインの更新を忘れてたって話です(笑)

 

1年契約が過ぎると…?

私は、ムームードメインにて、1年プランで独自ドメインを取得したんですが、契約期間が勝手に自動更新されると思っていたんですね。

いや、だって、携帯や部屋の賃貸にしてもそうですけど、特に手続しない限り、勝手に自動更新される契約ばっかりじゃないですか。私たちの身の回りにある継続的な契約って。そしたら、ドメインの契約も勝手に自動更新されるって思うじゃないですか。

値段も年額1000円ぐらいなので、勝手にクレジットで引き落としてくれたって文句言わないよ?

 

ところが、期間満了をもってドメインを停止するという律儀っぷりを見せつけられたわけですよ(アクセス数が激減したので、さすがに気づきました)。

「あ、これはもしかして、もうダメなやつなのか…?」と思いつつ、メールボックスを漁っていると、ドメインに関する更新手続きの案内メールが届いていることを発見し、中身を見ると、手続きの猶予期間として10月1日まで待ってくれるとのことだったので、急いで更新しました。このときのマウスをクリックするスピードは過去最速だったかもしれない。

 

アクセス数はどうなる…?

いやぁ、一度ドメインが切れると、アクセス数は酷いものです。

当ブログは更新頻度はそれほど多くなく、アクセスの大半は検索流入なんですが、1日のアクセス数10未満とか、そういう状態がしばらく続きました。もちろん、Googleアドセンスの収益も0円です。

やっと、以前のアクセス数に戻ってきましたが、1週間ぐらい掛かったと思います。

 

まとめ

すみません。もしかしたら、ドメインの契約期間について、自動で更新するように設定できるかもしれず、自分がそれを知らなかっただけかもしれないですが、ちゃんと確認しなきゃいけないなーと痛感しました。

もし、誤ってドメインが切れちゃった!という場合は、とりあえず手続の猶予期間があるかどうかを確認し、猶予期間があるなら急いで更新手続をしましょう(更新しないつもりなら、そのままでも勿論大丈夫ですが)。

アクセス数については、自分の場合は1週間ぐらいで元に戻りましたが、これについては何とも言えません。すぐに元に戻るかもしれませんし、もっと時間が掛かるかもしれません。

 

…というわけで、ちょっと冷や汗をかいたというお話でした。

 

日本の高校野球における金属バットについて

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先日、U-18の高校野球日本代表が、アジア大会に臨み、韓国・台湾といったライバル国に敗れ、3位という結果に終わりました。

 

私は、夏の甲子園が終わった後に定例的に行われている国際大会が好きで、いつも見ているのですが、何というか、「あんまり日本チームって打たないな…」という印象を持っていました。

今回の大会は、左打者が多い打線を組んだ結果、見事に左投手をぶつけられてしまい、打棒が振るわなかったという見方も出来ると思いますが、それ以外の試合を見ていても、「守備が上手かったら、本来はアウトだよね?」という打球が多かったように思うのです。昨年、清宮選手が出場したU-18ワールドカップを見ていても同じ印象です。

 

当初、私は、金属バットと木製バットの違いと思っていました。

日本の高校野球は金属バットが主流ですが、国際大会では、高校生も木製バットを使うことになります。そうすると、まずは木製バットに慣れるところから始めなくてはならず(普段から木製バットで練習している選手もいると思いますが)、ただでさえ攻略が難しい韓国・台湾のレベルの高い投手を相手にして、全く対応が間に合っていないのではないかと。

では、韓国・台湾と同じように、日本の高校野球も木製バットを導入すれば良いじゃないかと思えますが(導入というより、かつて木製バットが主流だった時代に戻すと言った方が正確ですかね)、木製バットは芯を外すと簡単に折れてしまい、どうしてもコストが高くなってしまいます。一般的に、金属バットより木製バットの方が寿命が短いとも言われていますしね。

 

うーん、これは非常に由々しき問題だなぁと、完全に部外者である私が要らぬ心配をしていたところ、凄くタイムリーな記事を発見しました。

toyokeizai.net

 

反発係数が高い金属バットは日本だけという事実。

上記の記事によりますと、日本と同じように金属バットが普及しているアメリカにおいては、反発係数が木製バットと同じ程度になるバット(BBCOR規定)の使用しか認められておらず、反発係数の高い金属バットを使用しているのは日本だけだと指摘されています。

 

news.yahoo.co.jp

 

アメリカにおいて、BBCOR規定が導入されるようになった経緯を調べてみたところ、上記記事は次のように説明しています。

近年アマチュア選手たちも積極的に筋力アップのトレーニングを取り入れるようになり、アマチュア野球界も急激なパワー化が進んでいた。特に大学野球などでは、金属バットによる打球があまりに速すぎ投手らが対応できないアクシデントが発生するなど、危険性が指摘されるようになっていた。その問題を是正するために登場したのが『BBCOR』仕様バットというわけだ。

 

確かに、メジャーリーガーの卵たちが、金属バットをブンブン振り回しているところを想像しただけで恐ろしいですよね。ピッチャー返しとか殺人級でしょう。

そして、普段から、このような木製バット並に反発係数の低い金属バットを使用していたことから、木製バットにも抵抗なく対応し、U-18ワールドカップにおけるアメリカ代表の打撃成績は日本代表よりも良いと上記記事は指摘しています。

 

日本の高校野球もBBCOR規定を設けてはどうか。

というわけで、木製バットに切り替えることが経済的理由等により難しいのであれば、ひとまず、アメリカと同じように、木製バット並に反発係数を抑えた金属バットを順次導入していってはどうかと思うのです。

メーカーによる開発等の調整が必要となってくるため、直ぐに実現させることは難しいかもしれませんが、金属バットに依存した日本の高校野球を少しずつでも変えていかないと、高校レベルでは世界に勝てなくなるんじゃないかと心配になります。

 

Amazonの注文履歴がタイムマシンな件

ふと、Amazonの注文履歴を見ていますと、私の最初の注文は、2007年2月まで遡るらしいです。11年前です。

11年前の俺は一体何を買ったんだろう…と思って覗いてみますと、最初にAmazonで購入したのは、アジカンの「崩壊アンプリファー」でした。

崩壊アンプリファー

崩壊アンプリファー

 

 

ああ、確かに、その当時アジカンにハマってた。思い出した。てか、めっちゃ懐かしい(笑)

よし。しばらく、このタイムマシンの旅を続けてみよう(全部紹介できないので抜粋します)。

 

2007年~2013年

Apple iPod nano 4GB ブルー MA428J/A

Apple iPod nano 4GB ブルー MA428J/A

 

振り返ってみると、アジカンの崩壊アンプリファーを購入したのと時期を同じくして、iPod nano(4GB)を購入してました。

そういえば、このiPod使ってたなー。これも懐かしい。

ただ、私の記憶が確かならば、最終的に画面が映らなくなってしまって、勘だけを頼りにホイールをくるくる回して曲を選んでいた気がする(笑)

 

アグリー・ベティ シーズン1 コレクターズBOX Part1 [DVD]

アグリー・ベティ シーズン1 コレクターズBOX Part1 [DVD]

 

やべえ。アグリー・ベティ懐かしいw

見た目は冴えないけど、超ポジティブ思考の女の子が、ファッション雑誌の会社に入って、周囲の人間を変えていくっていうストーリーの海外ドラマです。たぶん今観ても面白いと思う。

これほんとにイチオシです。

 

らんちうのすべて―観賞と作出の「?」がわかる

らんちうのすべて―観賞と作出の「?」がわかる

 

……は?

いや、思い出した。らんちうを飼っていた親父に頼まれて買ったやつだ(笑)

その当時の親父の熱の入れようは凄かった。らんちうだけじゃなく、すんごいデカい水槽を買ってきて、アロワナを飼っていたこともある。

親父がしばらく家を空けるというので、私が代わりに餌をあげようとすると、思いっきり指を噛まれたのも良い思い出。二度と餌をあげることはなかったけれど。

 

ペルソナ4

ペルソナ4

 

なんだ。ただの名作か…。

以前別の記事でも書いたことがありますが、実は、購入してからソフトを紛失しており、ちゃんとクリアしたのは、PSVitaの「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」が初めてです。

ちなみに、ペルソナ5もクリアしましたが、個人的にはペルソナ4の方が面白かったな。

 

ロジクール ウルトラスリム キーボードカバー TK710

ロジクール ウルトラスリム キーボードカバー TK710

 

当時、iPadの外付けキーボードとして使っていたのがこちら。

商品画像ではよく分からないですが、背面がシルバーになっており、iPadに装着するとmacbookみたいになります。

同僚から、「あれ?それ、macbookですか?」と聞かれ、「いえいえ、iPadですよ」とドヤったことを昨日のことのように思い出します。

 

実際購入したのは、これではないんですが(その当時購入したものが、既に販売中止になっているため)。

なんか、友達と草野球をやろうという話になって、急遽Amazonでグローブをポチったんです。Amazonでグローブを購入するあたり、素人丸出しかも…(笑)

今でもそのグローブは大切に取ってあります。

 

行政法解釈学〈1〉実質的法治国家を創造する変革の法理論

行政法解釈学〈1〉実質的法治国家を創造する変革の法理論

 

Amazonでは随分と法律書をポチってきましたけど、その中でもダントツで印象深いのがこちらの神大名誉教授・阿部先生の本。

その当時ですね。実は、阿部先生に行政手続のことでお話を伺う機会がありまして。失礼ながら、阿部先生の著書を何一つとして読んだことがなかったので、慌ててポチって読んだのがこちらだったんです。

実務的視点から書かれた行政法の本ということで、他の学者にはない鋭い考察が至る所に繰り広げられています。大好きな行政法の本ですね。

 

おわりに

他にも、Amazonでポチったのものは沢山あるんですが、既にリンク切れになっていたり、あまりにも黒歴史過ぎて紹介するのが憚られるものだったり…w

他人からすると、どうでもいい紹介だと思いますが、どうしてもブログ記事にしたくなったので。。大変失礼しました。

皆さんも是非、Amazonや楽天などのネットショッピングサイトの注文履歴を振り返ってみてください♪

 

海賊版サイトのブロッキング議論におけるユーザーのハブられ方

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 いわゆる海賊版サイトのブロッキングをめぐって繰り広げられている議論を見ていますと、何と言いますか、「ユーザーのハブられ方、半端ないって!」と言いたくなります(すみません、思い切り乗っかりました)。

 

 この種の議論は、思い返せば、児童ポルノサイトに対するブロッキングが発端だったと思いますが、その時は、権利侵害の深刻さ、早急に権利を保護すべき緊急性等の観点より、現在の危難の存在、補充性、法益権衡という緊急避難の要件を満たすことに疑いはなく、特に強い異論はなかったように思います。

 しかし、民主的プロセスを経なかったことの弊害は大きく、海賊版サイトについてもこの理を拡大し、児童ポルノサイトのブロッキングが可能なのであれば、海賊版サイトについてもブロッキング出来るだろうと安易に行政が判断して、ブロッキングという超法規的措置(超例外措置)を、立法措置を経ることなく、ISPに要請してしまっている異常事態が起こっています。

 

ドワンゴ川上氏の意見に違和感

 ブロッキング肯定派のドワンゴ・川上社長(知財本部・インターネット上の海賊版対策に関する検討会議メンバー)は、ご自身のブログにおいて、政府の対応に対し、以下のようにコメントされています。

結論からいうと、今回の緊急避難的な3サイトのブロッキングについて、積極的な姿勢を示した政府の決定を支持します。ネットなどをみても、議論に時間をかけていない、いきなりすぎると、批判の声があがっていますが、政府がいかに緊急の事案であったとしても、こんなに迅速に対策を練り、実行にうつすのは珍しいことではないでしょうか。普段、政府の行動の遅さ、危機感の無さに文句をいっているであろう我々が、政府の行動が早いことに対して、まず批判から入るのはフェアではないと思います。

川上量生 公式ブログ「ブロッキングについて」)

 

 ブロッキングの是非はさておくとして、氏は、上記のように述べつつ、その後、「もちろん、法治国家として法制化を先行するべきだという意見は、正論です」と前置きしたうえで、次のようにも述べています。

そもそも法治国家の根幹とは「法を執行できること」ではないでしょうか。

ブロッキングの根本の問題は)海外のインターネットを使って、日本の法律を適用できない場所を意図的につくる犯罪者に対して、どういう強制執行力をもてるかという問題なのです。

(括弧内の文言は筆者が追加したもの)

 

 これを「自己矛盾」と感じるのは私だけでしょうか。

 海賊版サイトに対する適法な権利行使については、法治主義の実効的側面を重視しつつ、他方で、ブロッキングのような根拠法令の存在しない超法規的措置について、国家作用の法律適合性を問題としないのはかなり疑問です。法治主義をかなり都合の良いように解釈している印象を受けざるを得ません。これこそ「ブロッキングありきの議論」ではないでしょうか。

 

民主的プロセスに解決を委ねるべきである。

 断っておきますが、海賊版サイトを野放しにしても良いとか、ブロッキングはやってはいけないとか、そういう主張ではありません。出版社などの権利団体や政府の意向を踏まえて、何れにせよ「民意を問うべき」だと思います。そうでないと、当事者であるはずのユーザー(国民)がハブられ続けることになるからです。

 

 その際、是非議論して頂きたいのは、ブロッキングの有効性もさることながら、海賊版サイト以外の違法サイトへの対応はどうするのかという点。著作権だけが特別の保護を受けるのは何故なのかという疑問を呈している森弁護士と同意見です。

news.nicovideo.jp

 

 職業柄、違法性の疑いの強いNGサイト等をリストアップしたりしますが、海外にサーバーを置いて、「どうせ摘発できっこないだろ」という態度で運営しているサイトは山ほどあります。これは著作権侵害に限らないです。わいせつ動画の配信、違法医薬品等の販売、公安委員会への届出のない事業者による出会い系サイト…等々。挙げればキリがありません。

 そんな違法サイトを目にすることが多い者の立場からすると、海賊版サイトによる被害額の大きさなどに一定の理解は示せるものの、「じゃあ、それ以外の違法サイトは?」って、どうしても思っちゃうのです。なんで、著作権侵害 “だけ” は特別扱いなの?と。

 

 そういった点を含めてテーブルに乗っけてもらって、海賊版サイトへのブロッキングの是非をとことん議論してもらいたいと思います。

 

【CoinHiveマイニング】不正指令電磁的記録供用罪の成否をめぐる議論について

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 「CoinHive」の仮想通貨マイニングプログラムを自身のサイトに設置し、閲覧者のPCに指示を送り、閲覧者がこの事実に気づかないまま、強制的にCPUを使用してマイニングをさせた行為(以下、本記事において「本件行為」といいます。)につき、不正指令電磁的記録供用などの罪で摘発されたという直近の事件について、私が思うことをあれやこれやと書いてみます。

 

 なお、事件の詳細を知りたい方は、実際に摘発されたご経験を持つモロさんのブログが非常に参考になると思われます。

doocts.com

 

マイニングプログラムを用いる行為の違法性

 マイニングプログラムをめぐる一連の議論の一端を見ていますと、どうも私は立法の不備があったように思えてなりません。ますは、この点をツラツラと書いてみます。

 

① 「意図に反する動作」について

 刑法第168条の2によれば、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」を、「正当な理由がないのに、・・・人の電子計算機における実行の用に供した」場合に、不正指令電磁的記録供用罪が成立するとされています(同条第1項及び第2項)。

 本件行為はまさに、「意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」を供用したという疑いを持たれているわけですが、そもそも「意図に反する動作」とは何ぞやと考えていくと、あまりにも広範且つ曖昧な概念のように思えてきます。

 

 法務省の見解によりますと、同罪の保護法益は「電子計算機のプログラムに対する社会一般の者の信頼」とされています。誤解のないように付け加えておきますと、これは個人的法益ではなく社会的法益です。

 同罪が、プログラムに対する信頼という社会的法益を保護するものだとすると、意図に反するものであるかどうかは、実際にマイニング行為をさせられたユーザーの個別的な主観ではなく、社会通念に従い、普通一般人の意図に反するか否かという観点から判断されることになると思われます。

 

 しかし、ネットユーザーの属性は様々であり、どのような場合に「意図に反する」といえるかは、一概に判断できません。今回のように、他人のパソコンのCPUを勝手に借用していたとしても、ユーザーによってはそれを事前に予測しているケースも考えられますし、まだ十分に認知されていないプログラムであるという点を考慮するにしても、アドセンス広告や行動ターゲティング広告はどうなんだって話ですし、人によっては、オーバーレイ広告やポップアップ広告の方が不快と感じることもあるでしょう。

 にもかかわらず、そのような広告手法を不正指令電磁的記録供用罪と断ずる意見や事例を聞いたことがありません。警察側は、ネット広告は閲覧者が表示を認識することができ、あるいは、表示に同意しないなら閲覧を中止することも可能であるという点において、両者は異なると言いますが、その理屈で言うならば、「世の中のいろいろなJSがアウト」というモロさんの指摘に対し、どのように反論するのでしょうか。

 

②「不正な指令」について

 仮に、「意図に反する動作」であったとしても、不正指令電磁的記録供用罪が成立するためには、それが「不正な指令」に基づくものであることが必要になります。立法当時、法制審議会においても次のように議論されています。

 

意図に反するものであっても,正当なものがあるのではないかというような御質問もあったかと思いますが,その観点からは,この要綱の案におきましては,対象とする電磁的記録を「不正な指令に係る電磁的記録」に限定しておりまして,例えば,アプリケーション・プログラムの作成会社が修正プログラムをユーザーの意図に基づかないでユーザーのコンピュータにインストールするような場合,これは,形式的には「意図に反する動作をさせる指令」に当たることがあっても,そういう社会的に許容されるような動作をするプログラムにつきましては,不正な指令に当たらないということで,構成要件的に該当しないと考えております。

法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会第1回会議 議事録

(下線は筆者によるもの)

基本的に,コンピュータの使用者の意図に沿わない動作をさせる,あるいは意図している動作をさせないような指令を与えるプログラムは,その指令内容を問わずに,それ自体,人のプログラムに対する信頼を害するものとして,その作成,供用等の行為には当罰性があると考えておりますが,そういうものに形式的には当たるけれども社会的に許容できるようなものが例外的にあり得ると考えられますので,これを除外することを明らかにするために,「不正な」という要件を更につけ加えているということでございます。

法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会第3回会議 議事録

(下線は筆者によるもの)

参照:「懸念されていた濫用がついに始まった刑法19章の2「不正指令電磁的記録に関する罪」高木浩光@自宅の日記

 

 そして、「不正な指令」の判断基準について、法務省は、「プログラムによる指令が『不正』な物に当たるか否かは、その機能を踏まえ、社会的に許容し得るものであるか否かという観点から判断することになる」としています(「いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について」法務省ホームページ・3頁)。

 しかし、この「社会的に許容し得るものであるか否か」という基準についても極めて曖昧であると言わざるを得ません。そもそも、ConiHiveは、昨年9月にスタートしたばかりであり、これが社会的に許容されるマネタイズ手法であるかどうかも十分に議論されておらず(世論が構築されておらず)、警察が一方的に「社会的に許容されない不正な指令だ!」と息巻いている状況なのです。

 もしかしたら、「鬱陶しい広告が表示されるぐらいであれば、CoinHiveのマイニングプログラムを設置してもらった方がいい」と考えるユーザーが増え、このようなマネタイズ手法が社会的に広く許容される時代が来るかもしれません。その余地が残されている状況下において、不確定要素の多い「社会的許容性」を拠り所とするのはナンセンスでしょう。これから先も、同じようなケースに何度もぶち当たることは想像に容易いですよ。

 

ネットユーザーたちの「意図」はどこにあるのか。

 先月、GDPRが施行されるなど、情報セキュリティは新たなステージへ移行しつつありますが、その一方で気になるのは、このような環境の変化に対応できるユーザーと、置いてけぼりを食らうユーザーとの間の情報格差です。

 甲南大学法科大学院の園田教授は、本件事案について、「技術者にとっては常識的な技術でも、一般の利用者にすれば、自分のパソコンが他人に道具のように使われているとは想像できないだろうし、そうされたいとも思わないだろう」とコメントしていますが、「本当にそうかな?」と思います。マイニングの意味を聞かされても、それが「良いこと」なのか、「悪いこと」なのか、ピンとこない人も沢山いるんじゃないかと思っちゃうのです。

 このような時代にあって、ネットユーザーの「意図」を軽々しく論じることは憚られるし、そのような流動性の極めて高い要素に依拠して犯罪の成否が左右されるという点において、私は、不正電磁的記録に関する罪の立法的欠陥があるように思えます。