箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

いい加減に「ストーリー思考を捨てろ」と自分に言い聞かせたい。

前回のブログで、「読切漫画については構成とか起承転結とかどうでも良い。主人公の意志や行動を、面白い画で演出しろ」という話をさせてもらった。実は、この点については、ぶっちゃけ以前から薄々気づいており、過去にこのような記事を書いたこともある。

 

 

僕は、2022年8月時点で既に、先にプロットを作って、そこに絵を当てはめると、「面白みのない絵面になってしまって、作品の良さが死んでしまう」ということを指摘している。特筆すべきは会話シーンに対する言及であり、僕は次のように述べている。

特に会話シーンなんかが顕著で、文字ベースで考えた脚本はどうしてもセリフ数が多くなるし、そこに無理やり絵を当て込むとバストアップのコマばかりになって、コマ割りが非常に窮屈になったりする。

 

1年半前の僕は、もうここまで分かっていたらしい。

 

さらに、僕の研究は続き、「読者はパッと見で続きを読むかどうかを決めているので、読者の目を引くような印象的な絵を描け」とか、「ストーリー」と「ビジュアル」を両立させることの難しさなどを説いており、「絵(画)の重要性」をヒシヒシと実感している。

 

 

そして、昨年末にシナリオ制作についてもう一度勉強し直したところ、僕の疑問は確信へと変わった。

すなわち、面白いストーリーというのは、「面白いシーン」が描けているかどうかに左右されるものであり、「面白いシーン」というのは「主人公の行動が魅力的に演出されているもの」を言う。結局のところ、そういう魅力的なキャラクターが描けていなければ、面白いストーリーにはならんということをまざまざと思い知ったのだ。

 

 

・・・そう。

僕は「印象的で面白い画(キャラ)を描かないと面白くならない」ということを感覚的に分かっていたし、知識としても得ていた。

 

じゃあ、なんで今回のネームでも躓いてしまったかと言うと、「シナリオ・センター式 物語のつくり方」の考え方に準拠し、キャラクターのイメージを膨らませながらも、箱書きを作るところからスタートしたからだった。つまり、頭に思い浮かんできたキャラクターや、シーンのイメージの整合性を取るために、それらのイメージに文字プロットで起承転結をつけようとしてしまっていた。なので、途中から「印象的で面白い絵」ではなく、「ストーリー展開を追いかけただけの説明」になってしまっていたわけだ。

 

さて、ではこれをどうしていくのかって話なんだけど、多くのシナリオ論者が指摘しているように、「キャラ」と「ストーリー」を切り離すことはできないし、これを同時に考えていく必要があって、「プロットを考える作業」からは逃げられない。しかし、何度も言うように、大事なのはストーリーではなくキャラクターであり、ストーリーというのは「ただのパターン」なので、キャラクターを魅力的に見せるためのシンプルなストーリーの枠組みがあればそれで足りる。極端なことを言えば、「正義の勇者が悪の魔王を倒す」という原始的なものでも良い。

 

つまり、ストーリーなんて、とりあえずそれっぽいのがあれば良くて、一通りの流れだけを考えたら、あとはひたすら「キャラを魅力的に見せるためのシーン・絵」をイメージしていくという作業に振り切っていきたい。

 

*****

 

結びに。

 

僕はどうしても、「ストーリーを魅せたい」という意識がどこかにあって、ネームを作っていると、「最後の大どんでん返し」をついついやりたくなってしまう。そうすると、絶対に「伏線」が必要になってくるし、読者に対する情報提示の量も増える。その結果、ダラダラと冗長な会話を続けたり、キャラの魅力とは関係のない話に脱線することも多かった。ストーリーを説明しなくちゃいけないからだ。

 

僕の感覚的に、ストーリーを説明しようとしている時点で面白さの本質からは外れている。ストーリーは「言葉であれこれと説明しなくても何となく分かる」というものでなくてはならないからだ。しかも、あれこれと説明したところで(仮に読者が内容を理解したところで)、読者からすれば「ふーん」という感想を抱いて終わりである。後には何も残らない。

 

以上を踏まえて、自分への戒めとしては「大どんでん返しなんて要らない」と言い聞かせたい。少なくとも読切漫画のページ数ではあっと驚くオチをつけるのは無理だ。素直に、「キャラの魅力を伝える」ということに全振りした方が良い。

 

  • ストーリーなんてシンプルな枠組みで良い。最初と最後でどう変化するのかを考えたら、あとはその間を繋ぐシーン(主人公の魅力を伝える絵)を考える。ロジックではなくイメージ。
  • ダラダラと長い会話シーンが思い浮かんだら考え直す。それはストーリーを説明しているだけ。ちゃんとキャラの魅力を演出する。大どんでん返しなんて要らない。