箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

漫画デザインのこれまでと今後について

昔、Twitterを覗いていたら、漫画のコマ割りの参考資料として、デザインの本を挙げている人がいて、その頃からデザインの考え方を漫画やイラストに活かせないかなーとずっと考えてきた。

それこそ、漫画は「コマ枠」「絵」「セリフ(文字)」の組み合わせによって、読む人の印象がガラッと変わってしまう表現物であり、そういう意味ではまさに「デザイン」といえるんじゃなかろうか。

 

もっとも、漫画の歴史は古いので、これまでの長い歴史の中で積み上げられてきた漫画のセオリーと呼ばれるものが存在する。「引き」とか「めくり」とか「フリ」とか「ウケ」と呼ばれるものがそれであり、それがある意味では漫画のデザインの考え方だといえる。

しかし、あくまもでそれは漫画出版という既存のビジネスの枠内で導き出された解答であって、もっと広い意味での「デザイン」という観点から俯瞰した時に、これからの時代に適した理想の漫画表現は他にもあるのではないか・・・と思わなくもない。

 

例えば、漫画出版という観点から見ると、漫画表現は「見開き」が普通であり、見開きを前提としたコマ割りを意識しなければならなかった。漫画を描かない人には分からないと思うが、見開きを前提として漫画を描こうとすると、「ノド側に絵を描いてはいけない」といったいくつかの制約が発生する。

特に、ストーリー構成については制約が大きく、あとから1ページだけ追加したいといったことが柔軟に出来ない。何故なら、見開き構成では、読者の興味を引く「引きのコマ」を左ページの最後に持ってきて、読者を驚かせるオチのコマを右ページの最初に持ってくる・・・といったページ構成にすることが大半であり、見開き2ページで1つの単位となっているため、あとから話の内容を変えたいのであれば、このページ構成自体を根本的に変えなければいけないからだ。

 

このように、従来の漫画は制約がたくさん存在する。絵やセリフは基本枠内に収まるように描かなければならないとか、印刷出版を前提としているので、絵はモノクロで描かないといけないとか、印刷で潰れてしまわないように、トーン線数を調整するとかね。そういう制約の中で、「ベタはこう塗った方がいい」とか「トーンはこう削った方がいい」とか、漫画デザインの考え方が確立されていき、いつしかそれがセオリーになったわけだ。

だとしたら、それがいつまでも正しいわけじゃない。Web漫画や縦スクロール型のウェブトゥーンといった新しい表現媒体が生み出されている現代において、その新しい表現形式に合った新たなデザインの考え方があってもいいはずであり、僕たちクリエイターは、新しいデザインを考えることに迫られていると僕は思っている。

 

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ここから先は、新しい漫画デザインのお話。

 

あんまり細かい話をしても仕方ないんだけど、僕は以前から「ウェブ媒体を中心に漫画を投稿するんだったら、必ずしもコマを割る必要は無いんじゃないか?」と考えていて、宮崎駿先生の「シュナの旅」のような構成も良いな―と感じている。絵本のような構成というかね。

 

他にも、最近はフライヤーやチラシのデザインをよく見るようにしていて、視覚的に「美しい」「ワクワクする」と感じるようなデザインを僕なりに探求している。

特に僕が良いなと思っているのはTRPGのデザインで、TRPGならではの非日常世界へとプレイヤーを誘うデザインが本当に素晴らしいと思う。TRPGのクリエイターは本当にデザインセンスがすごいなーと。

TRPGのデザイン

TRPGのデザイン

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あと、重要なのは配色かなー。

僕は以前からモノクロ漫画(真っ黒の線)に物凄い苦手意識を持っていて、それこそ、迫力のあるバトル漫画とか、おどろおどろしいホラー漫画を描くんだったら、真っ黒の線でも良いんだけど、優しい雰囲気や可愛い雰囲気の絵柄には合わないのではないかとずっと思ってきた。イラストみたいに茶色や濃紺の線で描きたいなーと。

そういう制約から解放された今は、真っ黒の線で漫画を描くことはなくなり、色々と試している最中である。ちなみに、僕は色数を増やした絵よりも、色数を少なく抑えた絵の方がピシッと締まった感じがしていて、なんか好きだな―と思っている。なので、最近は多くても4色ぐらいで描くことを目標にしている。

 

というわけで、漫画のデザインに関するお話でした。

このテーマは結構興味関心のある分野なので、今後も定期的に何か記事にするかも。