箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

ネームが完成したので意識したことをまとめておく。

やっとこさネームが終わったー。1月に入ってからほぼ丸々1ヶ月かかってようやく完成した。ページ数は全部で51ページであり、もしかするとあと2ページ足すかもしれないが、まあとりあえず形になったと思う。

 

この1ヶ月間は濃密な日々を過ごすことができており、めちゃくちゃ悩んだし、めちゃくちゃ考えたし、その結果、今までのネーム・コマ割りの考え方もガラッと変えることができた。そこで、この感覚を忘れないようにするために、完全に個人の備忘録になってしまうが、ネームで気をつけるべき点をまとめようと思う。

 

 

起承転結を考えたらダメ

まずこれ。起承転結は考えない方がいい。

 

映画や小説のように、ある程度の時間的な長さ・尺がある物語コンテンツであればともかく、漫画(読切)のような短いコンテンツでは、起承転結を考えてもうまくいかないことが圧倒的に多い。

僕の感覚的に、起承転結のあるストーリーを説得的に描こうと思ったら、60〜70ページぐらい必要だと思う。最近の連載漫画の1話目は大体そのぐらいの長さになっていることが多く、ブルーロックの第1話なんて78ページもある。つまり、本来はそれぐらい描かないと、起承転結になっていないということだ。

 

しかし、新人漫画家がいきなり60ページ超の作品を描くことはなく、ほとんどの場合は50ページ程度の読切漫画を描くことになる。それなのに、連載漫画の1話目と同じことをやろうとすると、全くページが足りないということになってしまうわけだ。

もちろん、起承転結のあるストーリーを描けないこともないだろうけど、無理やり50ページ程度に収めることになるので、大抵はコマ割りが窮屈になり、絵も小さくなって説得力や魅力が無くなってしまう。そういう漫画は「ストーリーの意味は理解できたけど、作品の魅力は伝わらなかった」という感想になることが多い。

 

なので、起承転結のストーリー思考はさっさと捨てた方がいい。

 

「始まり」と「終わり」と「繋ぎ」のシーンを考える。

じゃあどうしたら良いかと言うと、僕はシンプルに「始まり」と「終わり」を考えて、その2つの点を繋ぐ間のシーンを考えていくのが良いと思う。少なくとも今回のネームはそれでうまくいったように感じる。

 

僕の感覚的に、全体のシーンの数は多くても5つぐらいにしておいた方が良いように思う。イメージとしては、「始まり」のシーンがひとつ、「終わり」のシーンがひとつ、「繋ぎ」のシーンが3つという感じ。これが7〜8つぐらいになってくると、まとまらなくなるし、ページ数が足りなくなってくる。

 

ひとつひとつのシーンを濃密に描くという意識を持つ。

 

印象的で面白い絵を考える。

んで、シーンを考えるうえで最も重要なのが「印象的で面白い絵を描く」という意識。

 

証言するに、面白いストーリーというのは、魅力的なキャラクターたちによる「行動」の連続である。つまり、主人公の「行動」が「印象的で面白い絵」によって表現されていれば、多少オチが適当でも、読者は「面白い」と感じるはずであり、そういう絵をどれだけ多く盛り込めるかが読切漫画において最も重要になってくる。

画力が低かったり、ストーリー構成が未熟でも評価されている人は、そういう絵が描けている場合が多い。「こんな斬新な絵、誰も見たことがない!」・・・みたいなね。

 

絵を大きく描く。

「印象的で面白い絵を描く」ということと並んで重要なのが絵の大きさ。

 

僕はコマ割りをしていると、どうしても絵が小さくなってしまう傾向があり、同じようなサイズのコマがずっと続いたりする。そうじゃなくて、強調したいコマは思い切って大きく描く。この意識がめっちゃ重要。

 

ずっと同じ大きさのコマを続けない。緩急やメリハリをつけて、読者の感情に起伏をもたせる。

 

「顔マンガ」になったら「演技」や「演出」を考え直す。

コマ割りで一番避けたいのが単調な「顔マンガ」。

 

キャラの顔のアップのコマが続いてしまったら、キャラに演技をさせるとか、カメラワークを練り直すとか、「演出」をもう一度考え直す。

それが思い浮かばない場合(ただの会話劇になっている場合)は、そもそも、そのシーンの内容自体が良くないので、最初から考え直した方が良い。シーンで重要なのは「絵になるかどうか」。

 

とにかくキャラを棒立ちにさせない。キャラの感情や意志を「演技」を通して表現する。見開きページの中にそういう「演技」を必ずひとつは入れる。ちなみに、キャラの演技は多少オーバーに表現しても構わない。そのぐらいの方が読者には伝わる。

(何かひとつイベントが起こったら、それに対応するキャラのリアクションを必ず最低でもひとつ描く)

 

ストーリーの説明はせずに主人公の意志で局面を動かす。

キャラの魅力とは関係のないストーリー説明はしない。もしそういうシーンが思いついてしまったら最初から考え直す。

 

ストーリーに動かされている主人公ではなく、主人公が自分の意志で局面を動かしていくという意識を持つ。そうすれば、あれこれとストーリー説明をしなくても、ストーリーの意味は伝わるようになる。

 

あくまでも、ストーリーはキャラの魅力を伝えるための道具でしかない。

 

ありきたりだと感じたら少しズラす。

シーン描写がありきたりだと感じたら、その内容や着地点を少しズラす意識を持つ。

大事なのは「今まで見たことがない」という斬新さではなく、「思っていたのと少し違う」という違和感の集積。その違和感が積み重なっていくと、最終的に「全然違う」という感想に繋がっていく。

 

あと、お決まりのシーンは、別のシーンで代替できないかを考える。例えば、回想シーンはあまりにも使い古された手法なので、安易に回想シーンに逃げるのではなく、別のことをやりながら、主人公の「過去」や「感情」を伝えられないかと発想を転換させる。

 

むすびに

細かいことをいえば他にもあるんだろうけど、今回僕が強く意識したところを書いてみた。

今回のネームで学んだことを端的に言うなら「起承転結のストーリーを伝えるのではなく、キャラの魅力を伝える」ということに尽きるのかなと思う。全ての目的はそこにある。

 

そのためには、自分自身がそのキャラを好きにならないといけないし、そのキャラの魅力を100%引き出すために、そのキャラのことを100%理解していなければならない。そこまでできて初めて良いネームが描けるんだと思う。