箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

僕は幸村先生の「プラネテス」に救われた。

ちょっとセンシティブな内容になってしまうけど、8月31日に横浜駅の商業施設で17歳の女子高生が12階の屋上から飛び降り、下を歩いていた通行人と接触し、搬送先の病院にて2人とも死亡したことが確認されたという。

 

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夏休みの最終日に起こった大変痛ましいニュースであり、飛び降りた女子高生だけでなく、偶然にも巻き込まれた通行人の女性についても、ただただ御冥福を祈るばかりである。

 

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僕の記憶が間違っていたら大変申し訳ないのだけど、僕の大好きな漫画「プラネテス」の作者である幸村誠先生は、飛び降り自殺をしようとしている人に対して、「面白い漫画があるんだけど読んでみない?」と言って、飛び降りる直前で引き止めることが出来たら嬉しいなーといった趣旨のことをコメントされていたように記憶している。

(確か、漫画の袖にそんなことを書かれていたような気がする)

 

僕は自分で漫画を描くようになり、「人生で一度でいいから、僕もそんな漫画を描いてみたい」「たった1人でもいいから救ってみたい」と思うようになった。

・・・それはなぜか。僕もこの女子高生と同じ年齢の頃に重度のうつ病に苦しみ、幸村先生の「プラネテス」のおかげで、日常生活に勇気や生きる希望をもらっていたからだ。

 

年齢でいえば18歳ぐらいの頃かな。うつ病のせいで毎日がしんどくて、地獄のような日々を送っており、本当に冗談抜きで、いつ死んでもおかしくないぐらい心が追い詰められていた。「よく死ななかったな」と、あの頃の僕を褒めてあげたい。

そんなときに出会ったのが、幸村先生の「プラネテス」だった。その当時、深夜に「プラネテス」のアニメがやっていて、偶然にもそのアニメを視聴した僕は、一瞬にしてそのストーリーに釘付けになった。特に、田名部愛というキャラがとても印象的で、「なんて前向きなキャラクターなんだろう」と強烈に惹かれたのを覚えている。

 

僕はすぐにジュンク堂書店にコミックを全巻買いに行って、宇宙にも興味を持った僕は、小難しい宇宙の学術書も購入し、大学の講義でも、たまたま偶然開講されていた「宇宙科学」とかいう謎の理系講座を受講した。めちゃくちゃ真剣に受講していたので、単位の評価が「S+」だったのを今でも覚えている。

 

間違いなく、幸村先生の「プラネテス」は、あの時の僕を救った。

 

もし、あの時に「プラネテス」に出会っていなければ、本当に冗談抜きで死んでいたような気がしている。「ああ、何も変わらないな」「自分はこのまま苦しみながら生きていくんだろうな」と人生を悲観しながら。そう思わずに、踏み止まることができたのは、「プラネテス」を読んで、「人生って案外良いものなのかも」と思えたからに他ならない。

 

なので、僕は、幸村先生に対して、並々ならぬ感謝の念を抱いており、ものすごーくおこがましいが、もしこの先の人生のどこかで幸村先生にお会いする機会があれば、「幸村先生の作品のおかげで、僕は生き続けることが出来ました」とお伝えしたいと思っている。

 

 

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僕も救ってもらった。だから、僕も漫画で恩返しがしたい。

 

飛び降りる直前の子に話しかけて、「ほら面白い漫画があるよ。ちょっと読んでみない?」と引き止めたい。そして、あわよくば、僕の漫画に感動して、「いったん死ぬのはやめる」と言って、そのまま階段を降りて地上に戻って来て欲しい。

 

そして、今抱えている苦しみなんて、5年後、10年後には綺麗サッパリ消えてるよ。その苦しみがずっと続くわけじゃないんだよ。いつか「人生は楽しい」と思える日が訪れるよ・・・・と、その子に伝えたい。

 

そんなことをふと思った夏の終わりでした。