箱庭的ノスタルジー

世界の片隅で、漫画を描く。

本気の模写を100枚描いたので感想を書いてみる。

 

8月末頃から開始して約2ヶ月。
やっとこさ「本気模写100枚企画」を最後まで完走できたので、やってみた感想とか、実感した効果などをツラツラと書いてみたい。

 

ちなみに、「本気模写」とは、線のタッチ、黒ベタ・トーン、効果線などの細部に至るまで、そっくりそのまま模写することを指し、同じ線を再現するためにブラシを変えるなど、徹底的に真似している。

また、黒ベタやトーンの加工はもちろんのこと、実際の原稿サイズを意識してコマのサイズも揃えているし、フキダシの大きさ、セリフのフォント等も可能な限り同じものを再現するようにしていて、とにかく「100%同じ絵を描く」という意識で取り組ませてもらった。

 

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まず、模写をやっていて驚かされたのは、絵が持っている情報密度の濃さだ。

 

普段の僕だったら、「もうこれぐらいでいいや」と手を止めているところだが、そこからさらに1段階、2段階と絵の密度が増えていく感じがして、例えて言うなら、常に虫眼鏡で覗きながら描いているような感覚だった。

特に、堀越先生、村田雄介先生、裏那先生の細部の描き込みは凄まじく、もはや狂気にも似たこだわりをヒシヒシと感じることができた。まさに脱帽である。

 

もっとも、最初の頃こそ、あまりの細かさに圧倒されていたけど、続けていくうちにそれが当たり前になっていって、気づいたら何とも思わなくなっていた。たぶん模写を始めてから1ヶ月ぐらいが経った頃だったかな。

今となっては、描き込みが少ない絵を見ると、「うーん、あっさりとした絵だなぁ」と思っている自分がいて、明らかに絵に対する見方が変わったと思う。何と言うか、僕の頭の中にある絵の解像度が上がったように感じる

 

自分の中で「最低でもこのラインまでは頑張るべき」というボーダーラインがアップデートされたというか、どうやって描き込みを増やしていくのかがぼんやりと理解出来たし、少しだけ絵に対する自信が身についたかもしれない。

また、絵の解像度が上がったことによって、線に対するこだわりも増えたし、「しげペン改」に出会えたことも僕の中で大きかった。併せて、「しげペン改」の作者様にも感謝申し上げたい。なお、詳しくは以下の記事に書いているのでここでは割愛する。

 

pochitto.hatenablog.com

 

2つ目に、デザイン感覚を磨くことの重要性を認識させられた。

 

絵を描いていると、どうしてもデッサンに意識が向きがちだけど、第一線で活躍されている漫画家の先生が描く絵というのは、必ず「遊び」がある。

例えば、現実にはあり得ないような表情・動き・ポーズを自由に描かれていて、自分の中にあるイメージや印象を優先されているんだなと感じる。それが漫画の醍醐味でもあるし、模写をやっていると、その絵からひしひしと作家性が伝わってきて、決してデッサンだけでは到達できない領域だと感じた。

(断っておくと、デッサンを否定する趣旨ではない)

 

これについては、機械的にデッサン、クロッキー、ジェスドロをやっているだけでは身につかない感覚というか、自分の中にあるクリエイティビティを解放し、それを磨いていく必要性を感じる。

ちょっと言語化するのが難しいけど、今後の方針としてかなり重要だと思うので、近日中に別の記事にてまとめてみたいと思う。

 

また、絵を完成させるまでの工程がかなりブラッシュアップされたように思う。

 

これまでの僕は、いきなり最初から下書きの絵を描き、本番の清書は下書きの線をなぞるだけ・・・ということが多く、資料ありきの面白みのない固い絵になっていた。いきなり下書きっぽいものから描いていくので、バランスも狂ってるしね。

 

そこで、今回の本気模写では、ボケ足の強い鉛筆を使ってラフを描くところからスタートし、徐々に形を整えつつ、シャープな描き味の鉛筆で下書きを仕上げていくことを意識した。左右反転を駆使しながら、全体のラフでバランスを整え、そこから細部を詰めていくという感じかな。

また、下書きの線もはっきりと描きすぎないことを意識。下書き線はあくまでも本番の清書を描くうえでの「目安」でしかないと自分に言い聞かせ、とにかく全体のバランスを重視しながら描いていった。

 

もちろん、僕がやっていることは「模写」であり、最終ゴールが分かっている状態でラフ・下書きを描いているので、厳密に言えば、オリジナルの絵を描く時とは訳が違うのかもしれないが、絵を描く工程の疑似体験が出来たというか、「ああ、こういう手順で描けばいいのか」と理解できたのは大きかったと思う。

特に、ボケ足の強い鉛筆ブラシを使って、形を整えていく感覚を掴めたのは大きかった。この工程がちゃんと出来ていないから、いつまで経っても絵のクオリティが上がらなかったんだなと、今となっては思う。

 

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それ以外にも、ブラシの研究もできたし、「こういう時にはこういうブラシを使う」という使い分けの基準も自分の中で作ることができた。これもひとつの大きな収穫だと思う。

 

ただ、そういうテクニックもさることながら、今回の本気模写をやってみて僕が感じたのは、絵に対する向き合い方とか、メンタリティの部分が変わったことが大きかったと思う。

プロの先生方から「読者を感動させたいんだったら、最低でもここまでやれ」と檄を飛ばされている感じがして、身が引き締まる思いがするし、そこまでのプロ意識を持つことが出来ていなかった自分を猛省した。

 

というわけで、本気模写の感想としては以上になる。

まだ自分の中で定まっていないので、もう少し考え方を整理して、明日ぐらいには今後の方針をまとめようかな。次に向かって走り出そう。

 

本気模写をやって本当に良かった。