前回からのつづき。
作家性を磨くためには、「モチーフ」と「テーマ」の掛け算という話を前回したんだけど、じゃあ翻って自分の場合はどうか。
これについては、以前「自分の好きな絵柄」という話題を取り上げた際にも話したことなんだけど、僕は「線やベタの使い方がパキッとしている絵柄」「デザインが記号化されている絵柄」が好きという話をしていて、中村佑介氏、(FFTの頃の)吉田明彦氏、松浦聖氏のような「シンプルながらもデザイン性・物語性を感じられる絵」が好きだったりする。
もっとも、緻密に描き込まれたリアル系の絵が嫌いというわけではなく、逆に背景絵については、キム・ドンホ氏、アラリコ氏のように、「温かみのある線で緻密に描き込まれた背景絵」が好きだ。
つまり、ここまでの話を総括すると、僕は「モチーフを写実的に描く」ということにあまり興味がなく、「モチーフを温かみのあるシンプルな線に置き換えて描きたい(ある程度デフォルメしたい)」と思っているタイプである。
たぶん、これが僕のテーマ性であり、「迫力を出したい」とか「胸がキュンキュンするような絵が描きたい」ということではなく、「ホッと心温まるような大人の絵本が描きたい」ということなんだろうなーと思う。ファンタジーに偏りすぎるわけでもなく、リアリティに欠けるというわけでもなく。
・・・それが自分の目指すべき線・デザインのような気がする。
また、自分が取り組みたいモチーフは「古典ファンタジー」であり、これは今も昔も変わっていない。色んな作家が散々擦りまくってきたジャンルなので、果たして新しい境地がまだ残っているのか・・・という一抹の不安・疑問はあるものの、僕は「自分なりのファンタジーのデザインはある」と思っている。
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それを踏まえて、「コンテンツ化」という観点からスケブの方向性を考えるに、そもそも、こういう取り組みは、自分が「好き」と思うことしか続かない。
例えば、僕は昔一生懸命イラストに取り組んでいた時期もあったんだけど、そのうち飽きてやめてしまった。結局、続かないのであれば意味がないし、生成AIが全盛の時代に「イラストで作家性を確立しよう」というのも無謀な話である。本職は漫画だし。
じゃあ、自分がやってて「楽しい」と思う瞬間は何かというと、「キャラデザ」とか「背景(空間)」を描いてるときだ。僕はこれしか続かない。いや、というか、自分のデザインを磨けるなら「ラクガキ帳」でもいい。
例えば、九井諒子先生のラクガキ本は、キャラデザ集というか、ストーリーボードというか、九井先生が「好き」と思ったものを好きなように描いているアートワークスであり、失礼ながらそんなに統一感もないし、最初から「コンテンツ」を意識して描かれたものとは思えない。
・・・ずばり、これでいいと思う。
自分が「好き」と思ったものを書き溜めていくうちに、それが自然とコンテンツになっていく。松村上九郎氏も自著「お絵かきぐらしのはじめかた」の中で語っているように、コンテンツは「練習絵」とかでもいい(そこに自分らしい線があれば)。
大切なのは、「自分のデザインを模索しながら好きなことを継続していく」ということだ。「SNS向けのコンテンツとして、流行りの◯◯をやろう」とかじゃなくて。
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こうやって色々と考えていくうちに、頭の中のモヤモヤが結構整理された気がしていて、「あ、そうか。スケブはラクガキ帳として描けば良いのか」と気付いた瞬間に、スッと気持ちがラクになった。本来、スケブってそうなんだよなぁ。自意識の捨て場というか。
まあ、そんな感じでボチボチやっていきます。


