こちらのネットニュース記事によると、「10代の若者の漫画離れが進んでいる」という。
これに対して、ネット上では様々な意見が飛び交っており、「若者は漫画から動画コンテンツへと移行した(漫画離れは進んでいる)」と捉える人もいれば、「紙の雑誌からアプリ・WEBへと移行しただけ(漫画離れは進んでいない)」と捉える人もいて、三者三様の様相を呈している。
面白いことに、この「若者の漫画離れ」というトピックについて、誰一人として正確なデータを持っておらず、現役の漫画編集者ですら、本当に「若者の漫画離れ」が起こっているのか把握出来ていない。
例えば、こちらのTwitterまとめにおいて、ガンガンJOKERの編集者のポストが引用されており、当該編集者はマンガアプリの利用率などに言及しつつ、「自分の体感としても、10代のアプリ利用者はとても多いように感じます。」と主張しているが、個人の体感値以上の具体的な経年比較根拠として、「漫画を読む若者の総数」が増えているのか、減っているのか、それとも横ばいなのかを示せていないのだ。
***
僕が思うに、若者の読者が減っているのかどうかはハッキリとは分からないが、ユーザーの固定化は間違いなく進んでいるだろうなと思う。
これはゲームでたとえれば分かりやすい。
例えば、Apexとかフォートナイトのように、リリースされてから年数が経っているゲームの場合、アクティブユーザーは年を追うごとに徐々に減っていき、最終的に古参プレイヤーしかいない環境になっていく(実際、PUBGでは「プロレベルのプレイヤーしかいない」と言われている)。
・・・このように、ゲームコンテンツというのは、徐々にユーザーが固定化される運命にある。
もちろん、今からApexを始める新規ユーザーもいるだろうし、その中には若者もいるだろうけども、流行に左右されやすい若者の場合、周囲の友人や推しの配信者がプレイしているものを自分もプレイしたいと思うはずであり、ユーザーの平均年齢が上がっていくにつれて、若者の周りでApexをプレイしている人も減っていき、その帰結として、徐々に若者の新規参入率は下がっていく・・・と考えるのが自然だ。
これに対して、「いやいや、うちの子供はApexをプレイしてるよ」とか、「うちの学校では今でもフォートナイトが流行ってるよ」と、個別具体的な反証例を挙げる人もいるだろうけど、こういうものは長い目で見ないと分からない。
実際のところ、Apexよりも歴史の長い格ゲーにおいては、「ほぼおじさんしか居ない環境」に陥っている。緩やかではあるが、最終的にはこうなる。
(ただし、近年のストリートファイター6は、若者向けのストリーマーイベントなどを駆使して、若者のユーザーを取り込むことに成功している)
・・・じゃあ、漫画市場はどうか。
僕が思うに、「漫画市場だけは例外」ということはなく、これと全く同じ現象が漫画市場でも起こっていると考えており、「緩やかに若者の新規参入率は下がっている」と想定している。
今はまだ十分な読者数がいるので、「若者の漫画離れ」と言える状況ではないと思うけども、これから先、若者の新規参入率が下がり続けていけば、漫画市場のユーザーの固定化はさらに進み、それこそ「長年にわたって漫画を読み続けてきたおじさん読者しかいない」という環境になると思う。
***
ここまでの話をまとめる。
漫画家目線でいうと、若者の漫画離れがどうこうではなく、「ユーザーが固定化されてしまった漫画市場」にあまり希望を持っていない。
要するに、漫画家というのは、「目の肥えたオールドファンを楽しませる新作を描いてくれ」という最高難易度ミッションを課せられているということであり、先ほどのゲームでたとえるなら、「格ゲーおじさんを満足させるような新規コンテンツを作ってくれ」と言ってるようなものだからだ。
それこそ、格ゲーの制作経験の少ない未熟なクリエイターが、今からカプコンに入社して、ストリートファイターの新作を作るようなものであり、そんなことが新人に出来るわけもなく、ほとんど大半の新人クリエイターが何の結果も残せずに業界を去っていくことになる。今の漫画市場というのはそういう場所だ。
じゃあどうするかといえば、「客層が違うマーケット」を自分で開拓するしかないんだろうなーと感じる。
例えば、SNSを中心に活動している松村上九郎氏は、フランス語圏の「バンド・デシネ」を描かれていて、従来の漫画市場のお客さんとは異なる客層を開拓しようと試行錯誤されている。
こういうふうに、独自のコミュニティを開拓できたクリエイターだけが生き残るというか。「漫画家」という枠組みをもっと考え直すフェーズに差し掛かっているのではないかと個人的には感じる。
そのあたりの話はまた別の機会にでも。
今日はこのへんで。

