少年誌で新人賞を受賞したとき、担当編集者から連絡がきて、「◯◯さんはプロとしてやっていきたいですか?それとも趣味でやりたいですか?」と質問をされたことがある。
僕はこのとき猛烈な違和感を感じつつも、自分より年下の若い編集者に対して、「プロとしてやっていきたいです」と真面目に返答したが、正直な本音を言うと、別にどっちでもいいと思っている。
・・・いや、というか、趣味でやっている人の方が強いとすら思う。
ご存知のとおり、今は出版社がSNSで有望な人材をスカウトする時代であり、むしろSNSで既に数字を持っている人に声をかけて、その人に好きなように漫画を描いてもらう方が効率が良い・・・ということが判明するようになってきた。編集者が漫画家を育てる時代はとっくに終わってると思う。
もちろん、出版社のお抱え漫画家としてコツコツと読切や短期連載を執筆し、原稿料(報酬)を貰いながら、ヒット作が出るまで描き続けるという従来のアプローチ方法も健在であり、こっちのルートでも成功できる人はできる。
ただし、こっちの従来のルートを選んだ場合、出版社(クライアント)の編集方針に応じて、自分の作風を調整していく必要があり、「読者ウケ」を意識しながら漫画と向き合わなくてはならない。ハッキリ言ってめちゃくちゃしんどい。
僕が思うに、漫画は自分が好きなことを好きなように描いて、「勝手に読みたい人が読んで下さい」と言ってるぐらいが丁度良いと思う。というか、漫画がヒットする人というのは、自分が好きなことを黙々と続けている人であり、趣味の延長みたいなノリで漫画を描いている人が多い。
しかし、そうではなく「仕事(義務)」と思って描いている人は、それがうまくいってる間は良いけれど、うまくいかなくなった時に急にしんどくなる。だから途中でやめちゃう人が多い。
・・・つまり、「趣味のノリで続けていける人」か「キツイ仕事を耐え忍んで続けていける人」のどちらかしか漫画の世界には残っていない。んで、「続ける」という観点から見たときに、仕事よりも趣味の方が圧倒的に強い。僕が言ってるのはそういう意味である。
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以前、Xで物凄く絵の手い人を見かけて、投稿されていた絵に付いていたリプを覗いてみたところ、案の定どこかの漫画編集部の人だった。
皮肉な話だけど、仕事として漫画家を目指している人より、こういう趣味で絵を描いている人の方が、たいてい絵は魅力的である。
もちろん、漫画が面白いかどうかは全然別の話だけど、僕の感覚的に、本当に売れているトップ層の漫画家を除けば、プロ・アマの間にそれほど漫画技術の差なんてなく、むしろ絵の魅力でカバー出来ている分、趣味で描いている人の方が上手いと感じることが多い。
例えば、「本なら売るほど」が話題になっている児島青先生は、漫画編集部にスカウトされて漫画家業を始められた作家さんだけど、これが初連載とは思えないほど漫画を描くのが達者であり、絵もめちゃくちゃ上手い。
1巻の巻末コメントを読んでいると、漫画原稿用紙の使い方を担当者に教えてもらいながら描いていたらしく、もはやプロの漫画家としてのキャリアがあるとか無いとか、そんなことは関係なくなってきているようにも感じる(児島先生が趣味で絵を描いていたのかどうかは全く知らないが・・・)。
まあ、要するに、好きでやってることしか続かないし、続かないこと以外はモノにならない。だから、好きでやってることしかモノにならない。そう考えたら、趣味以外は成立しないのではないか、とも思う。
最近はそういうことをウダウダと考え続けている。